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スカイマーク 「ANA19.9%出資」受け入れ 主導権争い「妥協の枠組み」 火種くすぶる

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

スカイマーク 「ANA19.9%出資」受け入れ 主導権争い「妥協の枠組み」 火種くすぶる

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航空会社「スカイマーク」の経営再建について会見する、左からスカイマーク・有森正和社長、同・井出隆司会長、多比羅誠弁護士、中原健夫弁護士、イングラル・佐山展生代表取締役、ANAHD・長峯豊之上席執行役員=2015年4月22日午後、東京都千代田区の国土交通省(宮崎瑞穂撮影)  民事再生手続き中のスカイマークは22日、再建に向けたスポンサーにANAホールディングス(HD)を選んだと正式に発表した。ANAは投資ファンドのインテグラル(東京)や金融機関など、他の出資者と合わせてスカイマークに総額180億円を出資し、5年以内の再上場を目指す。

 インテグラルは過半数

 ANAは出資に加え、共同運航や燃料の調達、安全面での協力を検討している。幅広い顧客基盤や豊富な知見を持つ国内最大手のANAの後ろ盾を得ることで、スカイマークの再生手続きは大きく前進するが、航空業界でのANAの影響力が拡大しそうだ。

 ANAの長峯豊之上席執行役員は東京都内での記者会見で「スカイマークは新しい航空需要を創造し、評価に値する企業だ。ANAのノウハウを活用し、航空業界の発展につなげたい」と強調。「スカイマークは独立した企業として運営される」との考えを示した。

 スカイマークは株式の価値をゼロにする100%減資を実施し、その後、インテグラルなどが出資する。出資比率はインテグラルが50.1%、ANAが最大で19.9%となる。

 両社は再生計画案をまとめ、5月29日に東京地裁に提出。計画案が地裁や債権者に認められた段階で現経営陣は退任し、会長にインテグラル、社長にANA側が指名した人物を就任させる予定だ。インテグラルの佐山展生代表取締役が役員に加わる見込みで、スカイマークの会長に就く案も浮上している。ANA側は次期社長を今後、選定する。

 佐山氏はスカイマークの路線について「(現時点で)縮小する考えは全くない」と述べ、当面存続させると説明。社員の雇用も維持する考えだ。

 ≪主導権争い「妥協の枠組み」 火種くすぶる≫

 民事再生に向けたスカイマーク支援の枠組みがようやく固まった。再生計画案の策定は前進するが、投資ファンドのインテグラルとANAホールディングスが対立した末の「妥協の枠組み」(関係者)。曲折も予想され、足並みが乱れれば利用者への影響が懸念される。

 「最低限でも出資の過半数を持つ。全部でも構わない」。スカイマークの破綻後すぐにスポンサー契約を結んだインテグラルの佐山展生代表取締役は早くからこう主張していた。

 「航空会社の支援を受けなくても再建は可能だ」とまで公言したのは、ANAが三井住友銀行などの金融機関と組んで、過半出資を目指していたからだ。主導権を渡せば、佐山氏の目指すスカイマーク本位の再建はおぼつかない。

 高収益が期待できる羽田空港のスカイマーク分の発着枠は航空会社の関心の的だった。他社に渡したくないANAは「再建には航空会社の経験やノウハウが欠かせない」との論陣を張り、にらみ合いが続いた。

 スポンサーは2月に募集され、ANAやオリックスなど20社前後が名乗りを上げた。だが、当初予定された3月が過ぎてもスポンサー決定の見通しは立たなかった。

 「民事再生手続きの監督委員の斡旋(あっせん)案が示されたことで、両者が折り合いに向かった」。事態が動きだしたのは、4月中旬だったと交渉関係者は明かす。

 「交渉なのでテーブルの反対側にいたが基本合意を結んだので第1幕が終わり、これからは同じ船に乗って第2幕が始まる」。22日の記者会見で佐山氏は協力していく姿勢を強調した。

 ただ、スカイマークは破綻直前までANAに共同運航などの支援を求めたが実現しなかった経緯があり「感情的なしこりが残っている」(航空関係者)ともされる。

 再生計画案の提出期限は5月29日。両者は出資総額や比率、再生計画案が認可された後の役員構成などでは合意したが、肝心の事業計画は内容に乏しいままだ。

 再生計画案には路線計画なども盛り込まれる見通しで、利用者には路線や便数、安全性への関心が高い。再建のため一段の減便や不採算路線の廃止が必要になったときに「両陣営の対立が再燃する可能性はある」との見方も出ている。(SANKEI EXPRESS

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