SankeiBiz for mobile

アジア開銀、増資検討を要請 年次総会閉幕 AIIB、存在感アピール 日本は対抗鮮明

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

アジア開銀、増資検討を要請 年次総会閉幕 AIIB、存在感アピール 日本は対抗鮮明

更新

記者会見するアジア開発銀行の中尾武彦総裁=2015年5月5日、アゼルバイジャン・首都バクー(共同)  アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていたアジア開発銀行(ADB)年次総会は5日、閉幕した。中尾武彦ADB総裁は演説で「近い将来、加盟国に増資の支持を求める」と各国に増資の検討を要請。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗し、資本力を高めて途上国のインフラ整備を加速させる考えを表明した。

 増資が実現すれば、2009年以来となる。ただ増資を実行する際には、経済規模が急拡大した中国やインドといった新興国の出資比率や議決権を、どこまで高めるかが焦点となるのは必至で、議論は難航しそうだ。

 現在の出資比率は、日本が15.7%、米国が15.6%で、日米が最大の出資国としてほぼ並んでいる。一方、中国は6.5%、インドは6.4%にとどまっている。

 ADBは今回の総会で、17年から融資能力を最大で1.5倍に拡大することを決めているが、中尾総裁は「それだけではアジアのインフラ需要を満たすには不十分だ」と指摘した。

 4日の各国代表による演説では、中国の楼継偉財政相(64)が、ADBに対し「資本を充実させ、組織の効率を上げてほしい」と発言。融資を増やすだけでなく、新興国の発言力を高めるためにも増資に踏み切る必要があるとの考えをにじませた。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪AIIB、存在感アピール 日本は対抗鮮明≫

 ADBの年次総会では中国主導のAIIBの存在感が際立った。双方は融和を演出する一方、ADBの最大出資国である日本はインフラ投資の拡充を打ち出し、中国への対抗意識を鮮明にした。

 加盟国不満に危機感

 「AIIBとADBはとても良い意思疎通をしている」。中国の楼継偉財政相は3日、共同通信の取材に対し「両者はパートナーだ」と強調。3日のセミナーでは、同席した麻生太郎財務相(74)と満面の笑みで握手した。

 今年3月にADBを「官僚主義」と言い放った楼氏だが、今回は批判を抑えた。総会の開幕直前には、AIIB初代総裁への就任が確実視される金立群・元財務次官がADBの中尾武彦総裁と友好的に会談。ADBと対等な国際金融機関としてAIIBを世界に印象付ける-。中国の動きからは、そんな意図がうかがえた。

 「ADBはもっと大きくなる必要がある」

 インドのジャイトリー財務相は、年間8000億ドル(約96兆円)とも言われるアジアのインフラ需要に応え切れていないADBへの不満を漏らした。AIIBへの期待は「手続きが煩雑で反応が遅い」(ジャイトリー氏)など、ADBへの不満の裏返しでもある。

 防戦を強いられた中尾ADB総裁は5日の総括演説で「近い将来、加盟国から増資の支持をとりつけたい」と資本増強に言及した。新興国の発言力を高めることにつながる増資に踏み込まなければ、加盟国の不満を解消できないと危機感を高めたためとみられる。

 4000万ドル拠出表明

 「アジア向けのインフラ投資を量的に拡充する」。麻生財務相は今回の総会に合わせて、日本独自の戦略を打ち出した。官民の連携方式でインフラ投資を推進するため、日本政府がADBに4000万ドル(約48億円)の資金を拠出すると表明。

 中国は今も「全ての国の参加を歓迎する」(楼財政相)とAIIBへの合流を呼び掛ける。英国やドイツなど欧州の主要国が軒並み参加を決めたのに対し、日本は組織運営の透明性向上といった条件を突きつけ、待ちの姿勢を崩していない。

 日本が参加しなければAIIBが資金調達する際に発行する債券の格付けはADBよりも低くなり、結果として低金利での融資ができなくなるとの見立てもある。

 一方、中国は年内のAIIB設立に向けて着々と作業を進めている。大地震で甚大な被害を受けたネパールでは、国内各地の交通網や住宅が破壊された。すぐにでも資金が必要なネパールにとって、融資を決めるまでの時間がADBよりも短いとされるAIIBの貸し付けは、市場金利に近い水準になったとしても魅力的に映る。

 「AIIBに支援を要請する」。ネパールのマハト財務相は、こう明言した。(共同/SANKEI EXPRESS

 ■ADBとAIIB ともにアジア域内のインフラ事業などに対し融資をする国際金融機関。日米の主導で1966年に設立されたアジア開発銀行(ADB)には67カ国・地域が加盟。アジアインフラ投資銀行(AIIB)は中国が主導して年内の設立を目指している。英国やドイツを含む57カ国が創設メンバー。 

ランキング