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政治
【安倍政権考】軍事研究 曖昧路線続く東大
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安倍晋三政権が軍事研究をめぐる東京大学の迷走に頭を痛めている。政府は大学の軍事研究の有効活用を目指す国家安全保障戦略を閣議決定済みで、毎年800億円規模の交付金を東大に捻出している。このため、東大(当時・浜田純一総長)大学院情報理工学系研究科が昨年、軍事研究を解禁した。ところが、その後、曖昧な姿勢に転じ学内で混乱を引き起こしているのだ。政府予算獲得のため軍事研究に前向きな姿勢を示す一方、学内反対派の顔色も伺う必要性があり板挟みになったとみられる。4月に新総長に就任した五神(ごのかみ)真・前理学部長(57)も沈黙を守っており、東大のカバナンス(統治能力)欠如が浮き彫りになっている。
五神氏は4月17日、総長就任記者会見に臨んだが、軍事研究に関する自身の考えの表明はなかった。そもそも1959年と67年に軍事研究禁止を確認した東大の評議会は単なる審議機関で、軍事研究の是非など運営方針の決定権は総長にある。総長には審議結果に従う法的義務はない。だが、東大は評議会での一部の総長らの軍事忌避に関する発言をよりどころに禁止方針を自動的に継承してきた。
その後、東大は昨年12月に方針を転換。大学院の情報理工学系研究科のガイドラインを改訂し「軍事・平和利用の両義性を深く意識し、研究を進める」と明記し、軍民両用(デュアル・ユース)の技術研究を容認した。以前は「一切の例外なく軍事研究を禁止する」としていた。
ところが、当時総長だった浜田氏(65)は今年1月16日になるとホームページ(HP)上で「軍事研究禁止は(中略)、重要な基本原則の一つ」としつつも、「個々の場面での適切なデュアル・ユースのあり方を丁寧に議論し対応していくことが必要」と説明。禁止を掲げながら軍事研究を内包したデュアル・ユースを肯定するという整合性のないコメントを発表した。
こうした浜田氏の声明について、東大東洋文化研究所の安冨歩教授は「軍事研究否定のポーズを示しつつ、実際は研究を可能にする矛盾した文章だ。原則を骨抜きにしてしまう。このような欺瞞(ぎまん)言語を使うと悪影響が大きい」と指摘。学内での動揺が広がっているのが実情だ。
一方で、東大は3月、北京大(中国)、ケンブリッジ大(英国)、オーストラリア国立大の3校と全学規模で交流を深める「戦略的パートナーシップ」協定を相次いで締結。東大はこれまで、プリンストン大(米国)とのみ同様の協定を結んでいた。東大の軍事研究解禁に伴い、中国がデュアル・ユースの最先端技術を自国の軍事技術に利用する可能性もあるわけだ。
世界の主要国が産学官軍の協力による安全保障分野の研究開発にしのぎを削る中、日本では国外への「頭脳流出」も目立つ。
例えば東大では人型ロボットの開発を進めてきた研究者ら有志が2012年、肌が合わない東大を離れ、ベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」を立ち上げた。シャフトは13年11月、ロボット事業に意欲を示す米グーグルに買収され、翌12月には米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)主催の災害救助ロボットコンテストの予選で、米航空宇宙局(NASA)など強豪15チームを抑えトップの成績を収めた。
文部科学省幹部は13年11月の衆院文部科学委員会で「軍事研究を禁止する全学の内規は東大に存在していない」と明言した。軍事研究解禁を肯定する内規を制定すればガバナンスの確立も容易になるが、広報課は「考えていない」と後ろ向きだ。このままの曖昧路線が続けば現場の教授や学生が軍事研究の扱いに困る場面も出てきそうだ。(比護義則/SANKEI EXPRESS)