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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】アジアの新星にBravo!

 韓国映画界、いや、アジア映画界に新星が生まれたと言うべきだろう。「初監督作品、カンヌ国際映画祭で絶賛!」というキャッチコピーも、決して誇大広告でないことは誰の目にも明らかだ。「私の少女」のプロモーションのために来日したチョン・ジュリ監督(34)は、図書館に座っていた文学少女がそのまま成長したような雰囲気を醸し出し才女という言葉がピッタリな人だった。

 世界中からの賛辞も謙虚に受け止め、「運が良かったんです」を繰り返すチョン監督だが、その幸運を引き寄せたのはほかでもない、彼女が10年という時間を費やして完成させたオリジナル脚本である。「シークレット・サンシャイン」「ポエトリー アグネスの詩」などで知られる巨匠、イ・チャンドン監督(61)がプロデュースを買って出、ペ・ドゥナ(35)とキム・セロン(14)という、世界が認める韓国のトップ女優2人を主演に据え、経験豊かなスタッフとともに珠玉の作品を生んだ監督に心からBravo!を送りたい。

 「村社会」の閉塞、丁寧に描く

 ソウルから小さな海辺の町に赴任してきた警察署長ヨンナム(ペ・ドゥナ)は、近くに住む少女ドヒ(キム・セロン)が学校だけではなく、家庭でも義父と義祖母から執拗(しつよう)な暴力を受けていることを知る。虐待の現場に駆けつけ毅然(きぜん)と自分をかばってくれるヨンナムに、ドヒは助けを乞うようになる。義父に殴られては逃げて来るドヒの体中の傷を見たヨンナムは、しばらくドヒを家に泊め面倒を見る。そんな中、ドヒの義祖母が不審な事故で亡くなる。一方、ヨンナムがソウルから左遷されたのは、同性愛者であることが理由だということが村で噂になる。虐待の現行犯で逮捕されたドヒの義父、ヨンハ(ソン・セビョク)は、ヨンナムがドヒを匿(かくま)うのは同性愛者としての「特別な理由」があるからだと告発する。

 さまざまな事件が絡みながら、韓国の「村社会」の閉塞(へいそく)感や外国人労働者に対する差別なども丁寧に描かれる中、物語は意外な展開を見せる。無駄な場面やセリフが一切なく、人々の孤独と傷ついた者同士の心の繋がりが淡々と語られ、静かな感動の余韻がいつまでも残る。

 鮮烈な光放つ女の勇気

 今やハリウッド映画にも幾度となく出演を果たし、ロンドンに拠点を移し活躍する韓国を代表する演技派女優、ペ・ドゥナは脚本を読んだ直後に出演を快諾した。キム・セロンはオファーされた役の難しさから何度か辞退したが、最後には「私がやらなければいけない役だと思った」と満を持して引き受けたという。実力人気とも韓国映画トップクラスの女優の共演も映画ファンの間では話題である。

 児童虐待や育児放棄などのつらい話を扱った映画は、近年世界中で数多く制作されている。殆んどの場合は、子供たちが置かれた、目を覆いたくなるようなひどい状況を描いていて胸が痛み救いがない。が、「私の少女」はそれらの作品と一線を画している。実母に去られ、血縁でない義父と義祖母に暴力を受け続け、学校でもいじめられる少女は、自分に向かってくる全ての暴力から逃れようともがく。つらい日常を忘れるために港の防波堤で一人踊り、村にやってきた女性警官に助けを求める強さを持っている。助けを乞われた女も逃げない。2人の女の勇気が鮮烈な光を放ち「死んでたまるか!」「殺されてたまるか!」と叫んでいるようだ。(映画監督 ヤン・ヨンヒ/SANKEI EXPRESS

 ■ヤン・ヨンヒ(梁英姫) 1964年、大阪市生まれ。在日コリアン2世。映画監督。最新作「かぞくのくに」は第62回ベルリン国際映画祭で国際アートシアター連盟賞を受賞。他に監督作「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」がある。

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