SankeiBiz for mobile

異色の「かわいい」ヴァンパイア熱演 女優 桐谷美玲さんインタビュー

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

異色の「かわいい」ヴァンパイア熱演 女優 桐谷美玲さんインタビュー

更新

女優の桐谷美玲(きりたに・みれい)さん=2015年3月25日、東京都中央区(宮崎瑞穂撮影)  映画、舞台、テレビドラマに加え、ニュースキャスター、ついこの間までは現役の大学生-と、エネルギッシュに自己研鑽(けんさん)に努めてきた。そんな桐谷美玲(きりたに・みれい、25)が公開中の主演映画「恋する?ヴァンパイア」(鈴木舞監督・脚本・原作)で演じているのは、人間の血を欲するヴァンパイア。主演への抜擢(ばってき)にうれしい気持ちもある半面、少しとまどいもあったというのが正直なところらしい。桐谷がヴァンパイアの映画と聞いてすぐに頭に浮かんだのは、どこか薄暗く切迫感のあるイメージ。タイトルの「恋する?」から漂う底抜けに緩く悠長なイメージとは、まったく結びつかなかったからだ。

 だが、桐谷は脚本を読み進めていくうちに、もやもやとしていた気持ちはいつの間にか消えてしまっていた。鈴木監督の世界観は、大勢の外国人観光客も訪れる横浜のおしゃれスポット、元町(横浜市中区)のパン屋を舞台にした、心がほっこりとするおとぎ話の体だったのだ。映画館の大スクリーンで完成作品を鑑賞した桐谷はSANKEI EXPRESSの取材に「すごい、かわいらしい世界観ですね。ヴァンパイアを扱った作品なのに、作風は今までにないくらい明るいものでした。ところどころ画面に小さく登場するアニメーションの絵も加わって、さらにかわいらしさが倍増しているな、という印象を持ちました」と声を弾ませた。

 明るい世界観

 台湾で生まれ育ったキイラ(桐谷)は世界一のパン職人になることを夢見るごく普通の女の子。でも、他の女の子とただ一つ違うのは、キイラがヴァンパイアだったこと。12歳のとき、人間との共存を模索していた祖父(柄本明)と両親は何者かに襲われ、キイラは両親を失ってしまう。命からがら祖父と日本へ渡ったキイラは、横浜・元町でパン屋を営む母親の妹、まりあ(大塚寧々(ねね))と夫、力彦(田辺誠一)に引き取られることになった。8年後、キイラと祖父も働くようになった叔母夫妻のパン屋に、台湾で毎日のように一緒に遊んでいた幼なじみで初恋の相手だった哲(戸塚祥太)がふらりと現れる。

 撮影中、桐谷はキイラがヴァンパイアであることを殊更に意識することはなかったそうだ。鈴木監督に指導を仰いだところ、「つらい過去が背景にあっても、ベースは明るくて、素直で、どこにでもいる恋する普通の女の子を演じてください」とアドバイスをもらったためだ。ぼんやりとしていたキイラのイメージがくっきりと輪郭を帯びたことで、だいぶ気持ちも楽になった。桐谷は「いつも、かわいく、一生懸命なのがキイラちゃん。そんなところを演技に出せればいいなと考えて撮影に入りました」と、キイラも顔負けの愚直さで必死に演技に取り組み、作品を通して恋に悩む若者たちにエールを送った。

 中国語の勉強になった

 本作はコンプレックスとの向き合い方を考えるうえで示唆に富んでいる。キイラには絶対に好きな人に正体を明かすことはできないというコンプレックスがあった。つまり、特撮テレビ番組の不朽の名作「ウルトラセブン」(1967~68年)で、宇宙の果てからやってきた主人公、モロボシ・ダン(森次晃嗣(もりつぐ ・こうじ))とまさに同じ葛藤に苦しんでいたのだ。さて、順風満帆の役者人生を歩んできた桐谷も1つや2つ「因果なものだ」と感じるコンプレックスぐらいあったのではないだろうか。「そんなに深く悩まないタイプなので。コンプレックスがあってもわりとあっけらかんとしていると思います。解決できることは解決して、私は先に進みますけどね」と桐谷。嫌みも覇気も感じさせないニュータイプの強者だった。

 実際、大学の授業で実施された中国語試験と撮影が重なった桐谷は、じたばたせず、キイラの親友みきを演じた台湾の人気女優、モン・ガンルー(孟耿如、23)に助けを求めた。「一生懸命、発音や文法を勉強していたので、私は撮影の合間にモンちゃんから実地で中国語を教えてもらいました。映画でもキイラに中国語のせりふがあったので、発音の練習をモンちゃんに付き合ってもらいました。本当に勉強になりましたね」。鈴木監督が「アジアの女性を喜ばせるために作った」という作品は、思わぬところでアジアの女性を喜ばせることになった。

 本作には香港のイーキン・チェン(47)、韓国のチェ・ジニョク(29)といった面々が共演者に名を連ね、仕上がりは国際色豊かなものとなったが、今の桐谷に海外の映画作品に積極的に出演してみたいという気持ちは薄いようだ。「うーん、あまりイメージしたことはありません。もちろん、そういう機会があればありがたいのですが…」。一歩一歩、俳優の経験を積み、もっと演技の引き出しを作った後の話と言いたげだった。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎瑞穂/SANKEI E XPRESS

 ■きりたに・みれい 1989年12月16日生まれ。千葉県出身。主な映画出演作は、2012年「荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE」「逆転裁判」、13年「100回泣くこと」、14年「女子ーズ」など。テレビドラマでは、14年「地獄先生ぬ~べ~」(日本テレビ系)など。今夏には主演映画「ヒロイン失格」が控える。

ランキング