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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】やっぱり料理上手な男はいいのよね~

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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】やっぱり料理上手な男はいいのよね~

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【かざすンAR(視聴無料)】映画「シェフ_三ツ星フードトラック始めました」(ジョン・ファヴロー監督)。2月28日公開(樂舎提供)。(C)2014_SOUS_CHEF,LLC.ALL_RIGHTS_RESERVED  □映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」

 「料理映画」であり、「恋愛映画」であり、「家族映画」であり、「ロード・ムービー」であり、そして「ツイッター映画」である。料理人を主人公にした映画は各国に多い。どの作品もおいしい「絵」とホロリな人間ドラマで観客の心をつかんできた。が、この「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」はスケールが違う。グルメ評論家が与える星の数に翻弄(ほんろう)される料理業界や、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に振り回される現代人を小気味よく皮肉り、スクリーン全体からインディーズ精神炸裂(さくれつ)だ。同時にハリウッドを代表する豪華キャストが続々と登場し観客をワクワクさせる事も忘れない。

 製作・脚本・監督・主演を見事に務めたジョン・ファヴロー(48)の人生そのもののような作品は、「自由を求めて挑戦し続ける男の成長物語」として心に残る。主人公を絶望させた「ツイッターの青い鳥」が「幸せの青い鳥」に変貌してゆくさまは実に痛快。ニューオーリンズ、ジャズ、ラテンなど、とっておきの音楽が「夢を追う料理人」を優しく包み込む。

 タトゥーだらけの太い腕で食材を刻む主人公のキャスパー(ファヴロー)はロサンゼルスの人気シェフ。有名フード・ブロガーのラムジー・ミシェル(オリヴァー・プラット)が店に来るという大事な日、離婚した元妻イネズ(ソフィア・ベルガラ)の家へ息子パーシー(エムジェイ・アンソニー)を迎えに行ったりしながらも渾身(こんしん)の特別メニューを考えていた。キャスパーの心を見抜いていた店のオーナー、リーヴァ(ダスティン・ホフマン)は「お前は雇われシェフにすぎない。この店は、ナイフやフォークまですべてを私が所有している。冒険は許さん、昔からの定番メニューを出していればいい」と高圧的だ。

 自分だけのために腕を振るう

 その定番料理はラムジーのブログで酷評される。「ネット上の噂なんか気にするな」と言われたキャスパーは、小学生の息子、パーシーにツイッターの使い方を教わり、ラムジーへの宣戦布告をダイレクトメールのつもりでツイートしてしまう。12万人のラムジーのフォロワーが大騒ぎし、店はやじ馬の予約客で埋まる。リベンジの日にもリーヴァに「今までのメニューだ!」と命令され、キャスパーは店を去る。ラムジーはキャスパーの不在について「奴は逃げた」とツイート。その文面に激怒し店に乗り込んできたキャスパーはチョコレートケーキをわしづかみにし、ラムジーに投げつける。

 店にいた客たちは修羅場の写真や動画を即刻ツイート、キャスパーは惨めな「時の人」となる。元夫キャスパーの再起を祈るイネズが言う。「私たちの思い出があるマイアミに行ってみない?」と。2人が出会いパーシーが生まれたマイアミで、キャスパーは「本当に作りたい料理」と出会う。心機一転、フードトラックでキューバンサンドイッチの店を始めるキャスパーとパーシー、そして同僚シェフだったマーティン(ジョン・レグイザモ)。男3人のロード・ムービーの結末には予想外のサプライズが待っていた。

 キャスパーが、自分を励ましてくれる美し過ぎるフロアマネジャー、モーリー(スカーレット・ヨハンソン)のために自宅でパスタを作るシーンが女心をくすぐる。自分だけのために一流シェフが腕を振るう姿を眺め出来上がったパスタを味わうモーリーは、何とも色っぽいため息を漏らす。「料理で口説かれ始まった辛(つら)い恋」の経験がいくつもある私だが(笑)、性懲りもなく「そう! やっぱり料理上手な男はいいのよね~」と唸(うな)ってしまった。2月28日から東京・TOHOシネマズ日本橋ほかで全国公開。(映画監督 ヤン・ヨンヒ/SANKEI EXPRESS

 ■ヤン・ヨンヒ(梁英姫) 1964年、大阪市生まれ。在日コリアン2世。映画監督。最新作「かぞくのくに」は第62回ベルリン国際映画祭で国際アートシアター連盟賞を受賞。他に監督作「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」がある。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2015年2月25日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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