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【英総選挙】保守党が奇跡的大勝 単独過半数 「分裂」の恐怖 浮動票呼び込む

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【英総選挙】保守党が奇跡的大勝 単独過半数 「分裂」の恐怖 浮動票呼び込む

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5月8日、サマンサ夫人(左)とともに保守党本部に到着し、得意げにポーズを取るデービッド・キャメロン首相=2015年、英国・首都ロンドン(ロイター)  7日投開票の英総選挙(下院、定数650、任期5年)は、与党、保守党が解散時より20議席以上伸ばし、8日午後0時45分(日本時間8日午後8時45分)現在、単独過半数となる326議席を獲得した。これにより、保守党を率いるデービッド・キャメロン首相(48)の続投は確実となり、公約である欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の実施に向けた動きが活発化する。

 キャメロン首相は8日、勝利を宣言し、「一つの連合王国を統合していく」と述べ、スコットランドの独立を阻止する意向を示した。また、欧州一の経済成長を達成した実績を強調し、今後も経済成長を重視していくことを約束した。

 キャメロン政権が進めた緊縮財政への不満は根強いが、英国民は財政再建に一定の評価を与えた形だ。

 一方、地盤だったスコットランドを中心に25議席以上を減らした労働党のエド・ミリバンド党首(45)は敗北を認め、辞任を表明した。保守党と連立与党を組んでいた自由民主党も40議席以上減らし、副首相を務めるニック・クレッグ党首(48)が辞意を明らかにした。

 一方、英北部スコットランドでは、昨年9月に英国からの独立を問う住民投票を主導した地域政党スコットランド民族党(SNP)が最大野党、労働党の議席をごっそり奪い、解散時の9倍超の56議席に躍進した。反EU、反移民を掲げた小政党、英国独立党のナイジェル・ファラージュ党首(51)は落選した。

 投票率は、2010年の前回総選挙並みの66%前後とみられる。(ロンドン 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ≪「分裂」の恐怖 浮動票呼び込む≫

 英総選挙で大勝した与党、保守党は、最大野党の労働党と投票直前まで支持率30%台で拮抗(きっこう)していたが、土壇場で底力を見せた。スコットランド民族党(SNP)の躍進が確実視される中、大票田イングランドの有権者が危機感を強め、保守党に奇跡的大勝をもたらしたとの見方が出ている。

 「スコットランド」鍵

 「選挙戦終了時と出口調査が発表された現在では、状況がまったく異なる」

 出口調査を基に議席予測が公表された後、英BBC放送のコメンテーターはこう強調した。保守党陣営の顔色には光がさし、勝利を信じていた労働党陣営には重い空気が垂れ込めた。

 選挙結果を大きく左右したとみられるのが、56議席を確保したSNPだ。

 「国を分裂させようとするSNPと、国を経済破綻に追い込む労働党が手を組んだら、英国は存続の危機に瀕(ひん)するだろう」

 キャメロン首相ら保守陣営は選挙戦で、「国家の危機」を徹底して訴えた。保守党の選挙カーには、キャメロン氏ではなく、ニコラ・スタージョンSNP党首(44)の上着の胸ポケットに収まる小さなミリバンド労働党党首の写真が使われた。

 ミリバンド氏は「国民の恐怖心をあおり、英国の心理的分断を図るのは危険でばかげている。私たちはSNPとは手を組まない」と何度も言明した。

 だが、昨年9月にスコットランドで行われた、英国からの独立を問う住民投票はイングランドの有権者の記憶に生々しく残っていた。専門家の間では、労働党とSNPが連立政権を樹立し、「英国分裂」が現実となることへの恐怖感が、投票日まで態度を決めかねていた浮動票を大きく動かしたとの見方が強い。

 また、キャメロン氏はEUからの離脱を問う国民投票を行えるのは保守党だけだ」とも訴えて、「反移民、反EU」を旗印に急速に支持を伸ばしていた小政党、英国独立党の支持層の取り込みにも一定程度、成功したとみられる。

 だが、選挙戦を取材してきた英国人記者は、「キャメロン氏は、英連合王国の統合強化のために尽くすとともに、経済成長の恩恵を感じていない国民の要望にこたえなくてはならない。さもなければ、任期の5年を待たずして厳しいしっぺ返しを受けることになるだろう」と指摘した。

 労働党は大幅後退

 一方、労働党は25議席以上減らして大幅に後退、「悪夢の一夜」(英BBC放送)となった。党の選挙運動を統括した「影の外相」のアレクサンダー候補がスコットランドの選挙区で、勢いに乗るSNPの候補で女子大生のマイリ・ブラック氏(20)に敗れた。ブラック氏は戦後の英下院で最年少議員となる。また、「影の財務相」のボール候補は、保守党の女性候補に敗れた。(ロンドン 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

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