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社会
【Q&A】明治日本の産業革命遺産 「わずか50年」 驚異的な成果を評価
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世界遺産に登録勧告された「明治日本の産業革命遺産」の構成施設、三池炭鉱の万田坑を見学に訪れた人たち=2015年5月5日、熊本県荒尾市(共同) 「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県)が今年夏、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録される見通しとなりました。実現すれば、日本の世界遺産は文化遺産15件、自然遺産4件の計19件になります。
Q 世界遺産とは
A 人類共通の財産として後世に伝えるため、世界遺産条約に基づきユネスコが登録します。歴史的建造物や遺跡を対象とする文化遺産、貴重な生態系などを保護する自然遺産、両方の要素を持つ複合遺産の3種類があります。
Q 日本にはどんな遺産がありますか
A 文化遺産には奈良や京都の寺社、広島の原爆ドーム、富士山などがあります。自然遺産には屋久島(鹿児島)や白神山地(青森、秋田)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京)が登録されています。
Q 産業革命遺産の登録は確実なのですか
A 文化財の専門家でつくる諮問機関が4日、登録するべきだとユネスコに勧告しました。7月初めに予定されているユネスコ世界遺産委員会の会議で正式に審査されますが、登録勧告はそのまま受け入れられるのが通例です。
Q どんな点が評価されたのでしょう
A 産業革命遺産は、幕末から明治期の製鉄所や造船所など、重工業発展の歴史を示す23施設からなります。諮問機関は「西洋の技術を積極的に改良して日本の伝統に適合させ、50年余りの短期間で産業化を達成した」と世界史的な価値を認めました。世界遺産の登録基準に「(人類の)価値観の交流を示す」「歴史上の重要な段階を物語る」という項目がありますが、これを満たすと評価されたのです。
Q 韓国は登録に反対していますが
A 戦時中、一部の施設で朝鮮半島出身者を強制労働させた歴史があるため、世界遺産にふさわしくないと訴えています。日本政府は遺産の価値を丁寧に説明し、理解を求める考えです。
Q 世界遺産になると何が変わりますか
A 世界的に有名になるので、観光客の増加が期待できます。一方、施設や景観をしっかりと守ることが求められ、6年に1度、世界遺産委に保全状況を報告しなければなりません。取り組みが不十分だと判断されれば、登録が取り消されることもあります。
Q 日本でほかに登録を目指す候補はありますか
A 世界文化遺産に推薦できるのは各国年1件で、来年はキリスト教の伝来と弾圧、復活の歴史を物語る「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本)が審査を受けます。2017年の候補は今年7月中に選ばれる予定です。
≪受け入れやすい一括推薦 戦略奏功≫
「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産登録に向けたお墨付きを得たのは、近年の審査傾向に合わせ、同じ分野の歴史遺産を一括推薦するなど、ユネスコ側が受け入れやすい条件を整えた政府の戦略が奏功したためといえる。
文化、自然、複合の3種を合わせた世界遺産の総数は、関係者の間で「管理の上限」と指摘されていた1000件を既に超えた。政府が「シリアルノミネーション」(同種遺産の一括推薦)と呼ばれる手法を本格的に採用し、23施設をひとまとめにしたのは、新規登録を抑えたいユネスコの意向にかなう。
ユネスコが産業遺産や近代建築の登録に積極的なことも追い風になった。世界文化遺産は、教会建築に代表される西洋の歴史的建造物の登録が先行してきた歴史がある。遺産の種類と登録地域の幅を広げたいユネスコにとって、東洋の産業遺産は歓迎しやすい候補だ。
世界的には、都市開発や環境破壊で登録抹消の危機にある遺産も多い。従来は関係省庁で進めていた推薦手続きを、政府が今回から閣議了解の対象に格上げし保全に万全を期すと確約した点も評価されたとみられる。(SANKEI EXPRESS)