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【ネパール大地震】世界遺産倒壊 「歴史が崩れ落ちた」 寺院など完全修復は見込み薄
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世界遺産の寺院、チャングナラヤンで、傾いた建物を支える処置をする作業員=2015年11月9日、ネパール・首都カトマンズ近郊(共同) ネパール大地震では、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産となっている史跡も甚大な被害を受けた。政府とユネスコは10日までに、首都カトマンズと周辺地域で世界遺産の被害状況調査を開始。寺院など多くの建造物が倒壊し、元通りの修復は不可能との見方が強まっている。文化財を誇りとしてきた市民の間にも落胆が広がる。
ネパールでは5世紀ごろから、ヒンズー教と仏教が混じり合う独自の文化が形成された。標高約1300メートルのカトマンズ盆地には、主に15~18世紀に建てられた歴史的建造物が残り、多くの観光客を魅了してきた。
ユネスコは盆地にある、カトマンズ、パタン、バクタプルの3つの古都と、チャングナラヤンなど4つの寺院を世界遺産としている。
ネパール最古のヒンズー寺院とされるチャングナラヤンは、地震で建物の四隅が全て大きく傾き、外側から木材などで支えている状態だ。調査に訪れた文化観光・航空省のアルナ・ナカルミさんは「放置すれば倒壊する。応急処置は施したが、余震が来ればどうなるか分からない」と話す。
文化観光・航空省によると、5月10日時点で世界遺産を含む480の歴史的建造物が全半壊したことを確認。調査が進めば、さらに数は増える見通しだ。スシル・コイララ首相(75)は、損壊した史跡の再建を5年以内に終えると表明したが、ナカルミさんは「無理な目標だ。専門家の数は限られ、被害総額も想像すらできない」と首を振った。
世界遺産では、旧王宮や寺院があるカトマンズのダルバール広場や、れんが造りの建物が並ぶバクタプルも、倒壊などで無残な姿となっている。バクタプルの商店主、チラン・ジョシさん(31)は「ただの建造物ではなく、われわれの歴史が崩れ落ちたように感じる。毎日、目にするのは悲しい」と話し、早期の再建を望んでいた。
ネパール警察当局は10日、大地震による国内の死者が8019人になったと明らかにした。近隣国と合わせ、死者数は8100人を超えた。
負傷者は1万7871人で、全半壊した建物数は約57万戸。余震などによるさらなる建物倒壊が懸念されており、政府当局は激しく損壊した建物の解体を進める方針だ。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪旅行者の聖地 被災商店が底力≫
首都カトマンズでは、登山者向けアウトドア用品店や土産物屋が営業を再開し始めた。観光産業の早期回復は見込めないが、「バックパッカーの聖地」として知られる地区では、商店主らが世界から駆け付けた救援隊に装備を販売するなど、苦境の中で底力を見せている。
「救援隊が主な客だ。テントや登山靴、防水ジャケットが売れ筋で、100人以上が買っていった」。安宿が多く、地震前はサンダル姿で道を闊歩(かっぽ)する旅行者の姿が多く見られたカトマンズのタメル地区。アウトドア用品専門店の従業員、カマル・アリヤルさん(23)が被災の苦しさを振り払うように話した。
ヒマラヤの“玄関口”ともいえるカトマンズの中心部にあるタメルには、登山用品を扱う店がひしめく。登山靴や防寒・防水服が日本や欧米の半額程度で店頭に並び、地震前はタメルで装備一式を購入してトレッキングに向かう旅行者もいた。
地震直後、多くの店が閉まったが「発生翌日には店を開けた」とアリヤルさん。タメルの目抜き通りではチベット仏教の工芸品など土産物店の約8割も5月上旬には再開していた。
AP通信によると、ネパールには年間約80万人が訪れ、観光業はネパールの雇用・経済の1割弱を占める。(共同/SANKEI EXPRESS)