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カストロ家の闘い 今は同性婚 ラウル議長の長女、合法化求め大規模デモ

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カストロ家の闘い 今は同性婚 ラウル議長の長女、合法化求め大規模デモ

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11月9日、首都ハバナで行われた、同性愛者たちの権利拡大と同性婚の合法化を求めるデモに参加したマリエラ・カストロ氏(中央)。自ら率いたデモで「あらゆる種類の差別と闘う」と誓った=2015年、キューバ(AP)  米国との国交正常化交渉を始めるなど、その変化が注目されているキューバの首都ハバナで9日、同性愛者たちが権利拡大と同性婚の合法化を求める大規模なデモを行った。デモを取り仕切ったのは、国家元首であるラウル・カストロ国家評議会議長(83)の長女で性科学者としても知られるマリエラ・カストロ氏(52)。かつてキューバでは、同性愛者は迫害の対象になっていたが、マリエラさんは「今後1年以内に同性婚を合法化させたい。偏見を抱えていては、われわれは先へ進むことができない」と語った。

 マイノリティー支援

 マリエラさんはキューバ国立性教育センターの所長で、機関誌「性科学と社会」の編集長も務めている。離婚歴が1度ある3人の子の母で、自身はセクシュアル・マイノリティーではないが、同性愛者や性同一性障害者などの支援を積極的に行ってきた。人民権力全国会議(国会に相当)の議員でもある。

 キューバでは1959年の革命後、同性愛は社会秩序を乱す悪とみなされ、ラウル氏の兄のフィデル・カストロ氏(88)が首相や国家評議会議長を務めていた時代には徹底的に差別され、同性愛者は矯正労働キャンプに送られていた。

 しかし、2000年代に入ると徐々に空気が変わりだし、05年にマリエラさんは性同一性障害者には性転換手術を受けることを認める法案を提出。3年の審議を経て08年から施行され、現在、キューバでは無料で性転換手術が受けられる。

 08年2月にフィデル氏が引退すると、マリエラさんはこの年から毎年5月、同性愛嫌悪(ホモフォビア)反対デモをリーダーとして実質的に主催してきた。今年は8回目だが、これまでは300~400人しかいなかった参加者が、今回は1000人以上に増加。さらにキューバだけでなく米国からも聖職者を呼び、20組の同性カップルの「愛の儀式」も執り行った。同性婚がまだ合法化されておらず、結婚式とは呼べないため、愛の儀式としたが、式の形式は完全に結婚式だった。

 議長、法王に謝意

 ロイター通信などによると、13年間連れ添ったパートナーと式を挙げたラウル・オルタさんは「これまでどれだけ不利益を被ったか計り知れないが、いつかこうした日が来ることを夢見てきた」と話した。

 カトリックが圧倒的に多い中南米諸国では、同性婚が合法化されているのはアルゼンチンとウルグアイだけで、他に都市としてメキシコ市で認められている。マリエラさんの尽力で同性愛カップルに異性愛カップルとほぼ同じ権利が認められるようになったキューバは、中南米で同性婚が合法化された3番目の国になろうとしている。

 マリエラさんは愛の儀式を見守りながら、「一人一人の人間は全くの平等で、完全な平等が実現してほしいと思うからこの運動を続けている。来年のデモでは正式な『結婚式』ができるよう合法化に向けて頑張る」と言い切った。

 ラウル氏は10日、バチカンを訪れ、米国との国交正常化交渉で仲介役として大きな役割を果たした法王フランシスコ(78)と会見、謝意を述べた。新生キューバは、父娘の強力タッグで大きく変わろうとしている。(SANKEI EXPRESS

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