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【逍遥の児】薫風吹き渡る出雲大社参拝

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【逍遥の児】薫風吹き渡る出雲大社参拝

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 薫風。したたるような新緑。心地よい季節。出雲大社(島根県出雲市)に向かう。

 JR出雲市駅で下車。立ち寄ったコンビニで思わぬ本を見つけた。「葬られた王朝・古代出雲の謎を解く」(梅原猛著・新潮文庫)。神話に彩られた出雲ならでは。さっそく買い求めた。

 参道に着いた。巨大な一の鳥居は石。二の鳥居は木。三の鳥居は鉄。そして四の鳥居は銅。異なる素材でできた鳥居をくぐる。心を整えていく。

 本殿が迫ってきた。現在の本殿は江戸中期に造営された。高さ24メートル。荘厳な造り。圧倒される。60年ぶりの「御遷宮(ごせんぐう)」。広大な屋根の葺(ふ)き替えを終えた。真新しい檜皮(ひわだ)。すがすがしい。参拝する。一般の神社では「2礼・2拍手・1礼」。だが、出雲大社は独特だ。「2礼・4拍手・1礼」。作法に従う。頭を垂れた。

 祀(まつ)られているのは大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)。「古事記」や「日本書紀」に登場する。青年期。兄神たちの従者として大きな袋をかつぎ、出雲の東、因幡(いなば)に向かった。途中、ワニ(鮫)に襲われた白ウサギを救う。心優しい若者は兄神たちの迫害などさまざまな試練を乗り越えて成長。出雲の国の統治者となる。その後、国を譲り、身を引く。

 本殿の裏へ回った。素鵞社(そがのやしろ)が建つ。スサノオが祀られている。八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した英雄だ。今も本殿を見守っているかのようだ。

 本殿西側の塀。小さな参拝所が設けられていた。大国主大神は西向きに鎮座していると伝えられる。地元の男性がにっこり笑っていった。

 「願い事があれば、ここから拝むのが一番です」

 実はひとつ、願い事があった。改めて拝むことにした。

 参道にもどる。甘味処「みちくさ」に入る。名物のぜんざいを注文。ぜんざいとは「神在(じんざい)」に起因するとの説がある。旧暦10月、全国から神々が集まり、「神在餅」がふるまわれるという。お椀(わん)が運ばれてきた。焼きたての餅。甘く煮た小豆。ほっとする。

 帰路。先に買った文庫本を読んだ。古代史の闇。現場を踏んだ直後だけに生々しく迫ってくる。(塩塚保/SANKEI EXPRESS

 ■逍遥 気ままにおちこち歩き回ること。

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