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政治
【党首討論】首相「戦争に巻き込まれない」 民主岡田氏と一方通行の主張合戦
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今国会初の党首討論で、民主党の岡田克也代表(左手前)の質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相=2015年5月20日午後、国会(斎藤良雄撮影) 安倍晋三首相(60)は20日、今国会初の党首討論に臨み、政府が国会提出した安全保障関連法案などをめぐり民主党の岡田克也代表(61)ら野党3党首と論戦を繰り広げた。首相は新たな安保法制に関し「一般に海外派兵は許されていない。武力の行使、戦闘行為を目的として海外の領土、領海に入ることは許されない」と述べ、自衛隊の海外活動の拡大に理解を求めた。
首相は、岡田氏の「安保法制の見直しで平和憲法が揺らぐのではという不安が国民の中にある」との指摘に対し、従来の安保法制では「(他国軍への)後方支援で自衛隊が機敏に活動できない」と説明。「戦闘に巻き込まれることがないような地域をしっかり選ぶのは当然だ」と語った。
「米国の戦争に巻き込まれる」との批判には「日本の意思に反して戦闘行動に巻き込まれることがないのは当たり前のことだ。あり得ない」と反論した。
また、維新の党の松野頼久代表(54)は拙速な法案審議を戒め、今国会成立にこだわらない対応を要求。改憲には「胸襟を開いて話し合おう。首相も戦後70年の節目に堂々と(方向性を)出してほしい」と積極的な姿勢を示した。これに対して首相は「決めるべきは決め、やるべき立法は作っていくという姿勢が大切だ」と述べ、今国会成立に意欲を示した。
共産党の志位(しい)和夫委員長(60)も11年ぶりに質疑に立った。「過去の日本の戦争は、間違った戦争だったという認識はあるか」とただしたのに対し、首相は「戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない。村山首相談話、小泉首相談話などの政府の談話を全体として受け継いでいく」と述べるにとどめた。
≪民主岡田氏と一方通行の主張合戦≫
安倍首相と民主党の岡田代表は20日の党首討論で新たな安全保障法制をめぐり火花を散らした。国民の理解を得て今国会成立を期したい首相に対し、集団的自衛権行使に反対を掲げ、世論の支持を取り付けたい岡田氏。国民世論を強く意識して臨んだ論戦だったが、議論はかみ合わず消化不良の印象を与えた。
岡田氏が党首討論に立つのは2005年4月以来、約10年ぶり。民主党政権時代には外相を務め、安全保障政策に通じるだけに、先陣を切って首相を追い込みたい考えだった。そのため岡田氏は「自衛隊のリスクが高まるのではないか」「米国の戦争に巻き込まれるのではないか」といった質問を繰り出し、国民に問題点を訴えようとした。
しかし、首相はその筋書き通りに答弁することは避け、集団的自衛権を行使すべき「武力行使の3要件」を説明することに時間をつぎ込み、法案の正当性を強調することに努めた。
これは、首相に“逃げ”の姿勢があったからではない。首相にとって、14日に閣議決定したばかりの安保法制を国民に説明できる絶好の機会だったからだ。国民の生命と財産を守るための安保法制という趣旨が、一部の野党やマスコミによる「戦争法案」とのレッテル貼りにかき消され、浸透していない焦りもある。
首相は討論中、自身の答弁をかき消すほどの大きなやじを飛ばす野党議員にいらだちを隠さず、「皆さんが分かっているかどうかではなく、国民に理解をいただきたいから、あえて3要件を説明した」と声を荒らげる場面もあった。
また、党首討論の場であれば、逆質問するチャンスもあった。しかし、あえてそれを封印したのも、法制の意義を国民に説明する機会と捉えていたからだ。だが、岡田氏は「納得できない」と反発し、討論後も「聞いていないことを延々と答えている。一国の首相としてどうかと思う」と記者団に不満をぶつけた。両氏とも国民への「分かりやすさ」を求めたことでは共通していた。それがかえって自身の主張を述べ合うだけになり、議論が一方通行になってしまった。
公明党の山口那津男(なつお)代表(62)は討論後、記者団に「かみ合った議論にはなり切れていなかった。お互いの主張を言い合うより、早く平和安全法制特別委員会で本格的な議論をすることが国民に正しく伝わる道だ」と指摘した。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS)