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政治
大阪都構想 否決 橋下氏「政治家は僕の人生で終了」
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所属長会議を終えて退室する橋下(はしもと)徹市長=2015年5月18日、大阪市北区(村本聡撮影) ≪維新、江田代表も辞任 後継は松野氏有力≫
大阪市を解体し、5つの特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が17日投開票され、反対多数で否決された。大阪市の存続が決まり、都構想実現を主張してきた維新の党の橋下(はしもと)徹最高顧問(大阪市長)は記者会見で「政治家は僕の人生で終了だ」と述べ、12月の市長任期満了での政界引退を明言した。
反対多数の結果を受け、維新の江田憲司代表も「責任を痛感している」として代表辞任の意向を示した。維新幹部は18日、国会内で対応を協議し、19日にも両院議員総会で後継の代表を選出する段取りを確認した。新代表には松野頼久幹事長が有力となっている。
住民投票の結果は反対70万5585票、賛成69万4844票で、反対が1万741票上回る僅差だった。投票率は66.83%だった。
橋下氏は2008年2月に大阪府知事に就任。10年に大阪府と大阪市の二重行政を解消し、住民に身近な行政を実現する都構想を提唱した。その後市長に転身したが、都構想への理解は浸透しきれず、5年をかけた悲願はかなわなかった。
橋下氏は17日夜の記者会見で、結果について「大変重く受け止める。都構想を説明しきれなかった僕の責任だ」と述べた。18日の市幹部との会議では「政令市・大阪市の枠組みを軸に二重行政の解消と住民自治の拡充をしっかり進めてもらいたい」と語った。
安倍晋三首相は18日、雑誌「正論」のインタビューで、憲法改正の必要性を共有している橋下氏について「今後とも強いリーダーシップや国民に訴えかけていく力を生かしていただきたい」と述べ、今後の連携に含みをもたせた。
都構想に理解を示し、橋下氏を後押ししてきた菅義偉(すが・よしひで)官房長官は18日の記者会見で「私は橋下氏を政治の舞台に引き出すときに説得した一人だ。非常に感慨深いものがある」と語った。
維新は、20日に党首討論、26日以降に安全保障関連法案の審議入りを控え、19日中の新代表選出で早期の立て直しを図る構えだが、党を創設した橋下氏が表舞台を去り、看板政策も失ったことで混迷は当面続くとみられる。
≪国政進出への期待 根強く≫
維新の党は18日、反対多数となった「大阪都構想」の住民投票の結果を受け、対応に追われた。代表辞任を表明した江田憲司代表の後任には松野頼久幹事長が有力だが、大阪選出議員を中心に政界引退を明言した橋下徹最高顧問を失うことへの衝撃は大きく、混迷は当面続きそうだ。
橋下氏が記者会見で「敗戦の弁」を述べた大阪市内のホテル。18日午前1時すぎまで約2時間に及んだ会見を終えた橋下氏や松井一郎大阪府知事を、馬場伸幸国対委員長ら大阪選出の議員が別室で取り囲んだ。
「まだまだやることがいっぱいある」
涙を流しながら橋下氏に政界引退を撤回するよう迫る馬場氏。だが、橋下氏は「そう言わないで。また飲みましょう」と答えるだけだった。住民投票の1週間前から頻繁に大阪入りした江田氏も党幹部を前に「もっと早い段階から頑張ればよかった。私に責任がある」と“男泣き”した。
橋下氏の引退撤回に対する期待は根強い。大阪系の維新幹部は「市長退任までまだ半年ある。可能性は低いが、橋下氏を慰留できないか考える」と語る。松浪健太幹事長代行も18日のフジテレビ番組で、橋下氏の将来的な国政転身に期待した上で「一枚岩でいないと、橋下氏が戻ったときの輝きが消える」と結束を呼び掛けた。
民主党出身議員を中心に「次」への動きも活発化した。幹事長には元民主党の松木謙公氏が浮上。松木氏は住民投票直前に都構想に関する党対策本部長に就き「1000人動員作戦」を指揮したことで大阪系にも高い評価を得た。ただ、松野氏を含め民主系が幹部を占めれば、憲法改正や集団的自衛権の行使容認といった主要政策への対応が変質することへの警戒感は残りそうだ。
野党第1党の民主党は当面、維新の動きを静観する構えだ。枝野幸男(ゆきお)幹事長は18日、記者団に「安保法制など重要な課題が目の前に迫っている。維新の党内事情に十分配慮しながらしっかり調整し、自民党と対峙(たいじ)したい」と語り、維新との共闘に意欲を示した。維新を巻き込んだ野党再編については「政策や理念で共通する仲間がいれば、できるだけ幅広く連携、協力をする」と述べるにとどめた。
岡田克也代表や枝野氏ら執行部は党の「自主再建」を重視しており、「いずれ維新側から合流してくる議員が出てくる。積極的に動く必要はない」(党幹部)とみている。(SANKEI EXPRESS)
<賛成> 49.62% 69万4844票
<反対> 50.38% 70万5585票
(選管最終。率は有効投票に占める割合)