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井浦新さん 下鴨神社式年遷宮を撮る 厳粛な空気の中で一本勝負

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井浦新さん 下鴨神社式年遷宮を撮る 厳粛な空気の中で一本勝負

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明りが消され暗闇となった中、白い幕の向こうで営まれた遷座祭=2015年4月27日午後8時過ぎ、京都市左京区(志儀駒貴撮影)  SANKEI EXPRESS連載「日本遊行 美の逍遥」でおなじみの俳優で写真家の井浦新(いうら・あらた)さん(40)には、2年にわたって撮り続けたテーマがある。京都市左京区にある世界遺産「賀茂御祖(かもみおや)神社(下鴨神社)」だ。4月27日に行われた「第三十四回式年遷宮」を最後に、井浦さんは下鴨神社の撮影に一つの区切りをつけた。6月には式年遷宮奉祝事業の一環として、写真展「御生(みあれ、Miare)」を開催する。これまで撮りためた神事をはじめ、下鴨の自然や鎮守の森である「糺(ただす)の森」などの写真から自身が選んだ作品を神社の神服殿で披露する。井浦さんの最後の撮影に同行した。

 式年遷宮は、21年に1度社殿を大規模に修復する神事。遷宮そのものの神事は数年かけて執り行われるが、一連の神事の中で最も重要とされるのが、4月27日に営まれた「遷座(せんざ)祭」(正遷宮(しょうせんぐう))。夜のとばりが下りた浄闇の中、神職ら約70人が御神体を乗せた輿(こし)を修復が終わった国宝の東西の両本殿に厳かに運んだ。

 この日の井浦さんは、神事に溶け込むかのような白の作務衣(さむえ)姿。遷座祭の開始時刻よりもかなり前から、玉砂利を踏みながらアングルを求めて境内を移動した。神事はリハーサルなしのぶっつけ本番の撮影なので、表情には緊張が走る。クライマックスとなるご神体を本殿に移すシーンでは消灯された境内で、気配を消すようにたたずみ、静かにシャッターを切っていた。

 撮影を終えた井浦さんは「神事の撮影は待ったなしの一本勝負。厳粛な空気に圧倒される一方、でも撮らなければという気持ちとのせめぎ合いの中で撮影しました」と振り返った。また、ただ単に写真を撮るだけでなく「下鴨の歴史や哲学、民俗的なお話を新木直人宮司から伺い、たくさんの学びをいただいて本当に勉強になりました」と感慨深げに話した。さらに「僕にとってはまだ終わっていないんです」。6月の写真展に焦点を定めていた。

 ≪21年に1度 そのものが「御生」≫

 遷座祭に先立つ4月26日、「井浦新の下鴨神社と式年遷宮」と銘打った講座が京都市中京区の京都商工会議所で行われ、井浦さんが下鴨神社への熱い思いを独特の語り口で披露した。

 2年前の葵祭(あおいまつり)で、社頭(しゃとう)の儀の代表参拝を務めたことがきっかけとなって、下鴨神社の神事や祭りの撮影をするようになったという。それ以前から個人的に京都を訪れると必ず下鴨神社に立ち寄っていたという井浦さん。とくに「糺の森」にひかれたという。

 糺の森は下鴨神社の鎮守の森。下鴨神社は全域がうっそうとした森林に囲まれ、境内林全体を糺の森と呼ぶ。総面積は12万4000平方メートル、東京ドームの約3倍にも及ぶ。

 なかでも午前2~3時のいわゆる丑三つ時(うしみつどき)にカメラ片手に「糺の森」を散策するのがお気に入りという。闇に向かって長時間露光でシャッターを切っても、「何も映らないのですけれども、何か映っている感じがする」と話し、「おどろおどろしい恐怖というより、闇の中の清らかさやある種の怖さなどを感じる」と闇への畏怖の念を口にした。

 さらに糺の森には神社が形成される前からなんらかの祭事をつかさどったと思われる古代の祭場や石(磐座(いわくら))がある。また、二つの川(賀茂川と高野川)が出合う三角州は古代から重要なポイントとされていたと指摘した。

 さまざまな神事を撮影する中で、気付いたことがある。神事が行われる時間が日中だったとしても必ず闇の中で行われるということだ。「神が棲む場所というのは暗闇の中。闇の中に存在して闇から生まれてくる」。「生まれてくる、再生するということが一番強烈に僕の心に残ったことなので、(写真展の)タイトルも『御生(みあれ、Miare)』にさせていただきました」と話した。

 また、新木直人宮司から下鴨神社についての話を聞くうちにこれまでおぼろげに感じていたことが一つに結びつき、それが「みあれ」であることに気付かされた。「みあれというものにひかれ、興味を持って糺の森を丑三つ時にさまよってたんだなと思いました」と振り返った。

 式年遷宮は21年という周期で行われる社殿の大規模改修。井浦さんによると、檜皮(ひわだ)や自然の素材を変えていくのに適したサイクルが21年という。さらに、人から人へ技術を伝承する時間も21年が適していると指摘。今回宮大工として修復に参加された若い人は21年後にはその技術を高めてベテランとなり、新しい人に技を継承するだろう。「人間も技術継承も含めて自然のサイクルとして21年がある」としみじみと語った。さらに「式年遷宮そのものが再生なのだと気付いた」と結んだ。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■井浦新写真展「御生(Miare、みあれ)」 6月20日(土)~9月30日(水)、午前10時~午後4時(6月20日は午後1時から)。京都市左京区下鴨泉川町59の下鴨神社神服殿(重要文化財)で。問い合わせは、(電)075・781・0010下鴨神社。

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