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原点に立ち返ったような新作 藤巻亮太
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シンガー・ソングライター、藤巻亮太さん=2015年3月3日(提供写真) 藤巻亮太が13日にミニアルバム『旅立ちの日』をリリースした。2012年2月にレミオロメンのバンド活動を休止して以降、自分自身の本来のあるべき姿を模索していくうえで、どうしても過去のイメージを払拭したいという気持ちが作用しているように感じていた。ソロ1枚目のアルバム『オオカミ青年』は、衝動、あらがい、そういった言葉が想起させられるような曲で、日本のポップシーンの真ん中でさまざまな人の気持ちを受け止めて曲に昇華していたレミオロメンとは違い、自らの衝動に従うこと、その衝動を見つけ表現すること、その根源となる自分自身を模索してゆくことなどが、作品を通して、そして直接話を聞かせてもらうたびに印象強く心をとらえた。
しかし昨年末に会った時には「ぐるっと一周したような感覚があった」と語っていて、新作を聴いてみるとその時の言葉が思い出された。私が作品を聴いて感じたイメージは、悩み苦しんだトンネルを抜けたすがすがしい気持ち、新しい気持ちで次の一歩を踏み出せるような気持ちであった。
歌詞にも「しがみついていた意地やプライド/手放したら/素直な気持ちで/歩き出すよ」とあり、ソロになってからの模索していた自分自身、積み上げてきたソロとしての「レミオロメンとは違う自分」というトンネルを抜け、素直な気持ちで音楽に向き合うことができているように感じる。
『旅立ちの日』は、レミオロメン時代のようにスケールの大きいサウンドアレンジが施されていて、原点に立ち返ったようにも聴こえる。その歌詞には「心の中生きているから」とあり、旅立つことや新たなステージへ向かうことが、今までの自分を否定したりするものではなく、心に留めながら次に進めるものなのだというメッセージとして受け止められる。
先日行われたライブで彼は「この2年間は時間帯で言うと夕方から夜だった。そして今、夜明けを迎えている」と語った。プライベートでは外国を旅し、アルピニストの野口健さんと山に登り、いろいろなスケールで世界を見てきた彼が音楽キャリアでたどりついた場所、そこは明るく見晴らしの良い、築いてきたキャリアをポジティブな糧にする、そんな音が鳴る場所のようだ。
音源もさることながら、このアルバムを引っさげてのツアーで集められた同世代のバンドメンバーを率いてのライブも、今後注目したい。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS)