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【FIFA汚職】ブレーザー元理事、賄賂授受認める 「ミスター10%」 1時間で内通者に
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ゼップ・ブラッター氏(右)と並ぶ情報提供者のチャールズ・ブレーザー元理事。絶大な権力を誇った=2015年6月4日、ドイツ・フランクフルト(ロイター) 国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件で、ロイター通信は3日、ワールドカップ(W杯)の2018年ロシア大会と22年カタール大会をめぐる招致活動についても米連邦捜査局(FBI)が捜査対象に含めていると報じた。
リンチ米司法長官は先月27日、両W杯に関し独自に捜査を進めているスイス捜査当局への協力姿勢を打ち出しており、米当局としても捜査範囲を広げ、腐敗を全面的に摘発する方針を固めたとみられる。
FBIは両W杯について、米国税当局を交えて10年末頃から内偵。ロシア招致について資金洗浄を中心に調べたほか、カタール招致ではFIFA理事会の3人にカタールから総額150万ドル(約1億8000万円)が渡った疑惑について関係者から事情を聴いた。
一方、米検察は3日、FIFAのチャールズ・ブレーザー元理事(70)が、1998年と2010年のW杯招致に絡んで賄賂の授受があったと米連邦地裁に証言した法廷記録を公表した。元理事は13年に脱税などで有罪を認めていた。
元理事は1992年ごろ、他の数人とともに98年のW杯招致で賄賂を受けとることで合意。起訴状によれば、元理事は98年の招致でフランスに敗れたモロッコとの関連が指摘されている。また、元理事は2010年の南アW杯に絡みFIFA理事会の数人とともに南アから賄賂を受け取ることでも合意した。FBIは元理事を協力者に仕立て、一連の汚職を立件した。(ニューヨーク 黒沢潤/SANKEI EXPRESS)
≪「ミスター10%」 1時間で内通者に≫
国際サッカー連盟の汚職事件は、米当局への協力者に転じたチャールズ・ブレーザー元理事(米国)からもたらされた大量の極秘情報によって全容解明が一気に進んだ。
「手錠を掛けられて連れ去られるか、もしくは協力するかだ」。2011年秋、ニューヨーク市マンハッタンの5番街で、ブレーザー元理事は突然、連邦捜査局(FBI)の捜査員から声を掛けられた。
元理事は05~10年に1100万ドル(約13億2000万円)の不正利益を上げながら脱税を続けていた。米紙デーリー・ニューズによれば、元理事は捜査員にこの事実を突き付けられると、1時間もしないうちに捜査への協力を誓ったという。
ニューヨーク市出身で大学では会計学を専攻。少年らにサッカーを教える一方、得意のパソコンを駆使してニュースレターを親たちに配るなどし、地元サッカー協会の拡大に貢献した。
これが契機となり、米サッカー連盟、北中米カリブ海サッカー連盟の幹部へと上り詰め、同連盟のジャック・ワーナー会長(72)=FIFA元副会長=と知り合った。同連盟の事務局長に就任し、1996~2013年にはFIFA理事も務め、絶大な権力を手にした。
元理事はスポーツ関連業者に契約額の1割を見返りに要求し、「ミスター10%」の異名もとった。ニューヨークの豪華マンション「トランプ・タワー」に月額2万4000ドル(約290万円)の部屋を借り、飼い猫には月額6000ドル(約72万円)の部屋も与えた。米マイアミやバハマのリゾート地に高級別荘も所有した。
FBIの協力者に転じると、小型マイクを忍ばせ、FIFA幹部らとの会話を録音。捜査員の傍らで幹部らと電話や電子メールのやりとりもした。標的は少なくとも44人に上った。
ニューヨークの元検察官ジョン・ラウロ氏は「(元理事は)捜査全体のブロックを積み上げる中心人物だった」と指摘。「米当局は他にも協力者を集めて“鎖”を作るだろう。狙いは『トップ・ガイ』(ブラッター会長)だ」と強調している。(ニューヨーク 黒沢潤/SANKEI EXPRESS)
≪ベッカム氏「卑劣でおぞましい」≫
FIFAの汚職事件を受け、かつての名選手たちも非難の声を上げた。AP通信が3日、報じた。元イングランド代表主将のデービッド・ベッカム氏(40)は「卑劣で受け入れ難く、おぞましい」と不快感をあらわにした。世界的な人気を誇ったベッカム氏は組織の早急な浄化を求め「サッカーは一握りのトップが牛耳るものではなく、このスポーツを愛する世界中の人々のものだ」と語った。
またブラジル代表のストライカーとして一時代を築いたロナウド氏(38)は、ブラジル・サッカー連盟(CBF)のデルネロ会長を名指しし「(逮捕されたCBFの)マリン前会長と懇意だった。辞めるべきだ」と訴えた。(共同/SANKEI EXPRESS)