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【トルコ総選挙】与党過半数割れ 連立交渉難航か 大統領、権限強化の野望遠のく
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少数民族クルドの旗を掲げながら、総選挙での躍進を喜ぶクルド人系政党、人民民主党(HDP)の支持者たち=2015年6月7日夜、トルコ・ディヤルバクル(AP) トルコの国会(定数550)議員選は8日、開票が進み、イスラム系与党・公正発展党(AKP)の得票率は約41%で過半数割れが確実となった。AKPが過半数を割るのは2002年に政権についてから初めて。憲法改正による大統領権限の強化を目指していたAKP出身のレジェブ・タイップ・エルドアン大統領(61)には大きな打撃となる。投票率は約86%。
現地メディアの開票速報によると、AKPの獲得議席は改選前の311を大きく下回る256程度にとどまった。第1党の座は確保したが、政権維持には他党との連立が必要となる。AKPを率いるアフメト・ダウトオール首相(56)は7日夜、「トルコの安定確保のためにあらゆる注意を払う」と述べた。
一方、台風の目として注目された少数民族クルド人系の左派、人民民主党(HDP)は約13%を得票して80議席前後を獲得。HDPのセラハッティン・デミルタシュ共同議長(42)は「大統領制をめぐる議論は決着した」とし、議院内閣制から大統領中心の体制への転換を目指すエルドアン氏とAKPの改憲論議は頓挫したとの見方を示した。
このほか、国是である厳格な政教分離の護持を主張し、AKPと激しく対立する共和人民党(CHP)は改選前からやや減らして132議席前後、右派の民族主義者行動党(MHP)は82議席前後をそれぞれ獲得した。
各党とも、現時点ではAKPとの連立に否定的だが、AKPは今後、CHPやMHPとの連立や閣外協力を模索するとみられる。開票結果の確定から45日以内に組閣で合意できなければ、再選挙となる可能性もある。(イスタンブール 大内清/SANKEI EXPRESS)
≪大統領、権限強化の野望遠のく≫
「本当の敗者はエルドアン(大統領)だ」。第2党のCHP幹部は7日夜、こう断じた。
与党AKPの創設者であるエルドアン氏は2003年、補欠選挙で当選してすぐに首相に就任して以降、選挙では連戦連勝を続けてきた。
首相在任中は国際通貨基金(IMF)主導の構造改革路線を前政権から引き継いで経済の安定化を実現。その成果を都市部に比べて開発が遅れていた地方部に手厚く分配し、支持基盤を強固なものとしてきた。
その一方でエルドアン氏は、自身に批判的なメディアへの統制を強めるなど強権的な手法を多用し、AKPと財界の癒着や汚職をめぐる疑惑も後を絶たなかった。政敵を排除するなどしてAKP内で絶対権力を確立したエルドアン氏は、オスマン帝国時代の王になぞらえて“スルタン”と呼ばれた。
「民主主義はバスのようなもの。目的地に着いたら降りればいい」
エルドアン氏はかつて、ヨルダンのアブドラ国王(53)にこう語ったと伝えられたことがある。民主主義は権力掌握の手段としかみなしていないとも受け取れる発言だ。AKPが今回総選挙で大統領権限の強化に向けて改憲を主張したことは、野党やAKPに反発する市民には「危険な野望」と映ったようだ。
総選挙では、内戦下のシリアに接する南部でAKPが大きく票を減らした。シリア反体制派を支援し、170万人超の難民を受け入れてきたエルドアン氏の対シリア政策への不満が強いことも明らかとなった。
AKPの過半数割れで、改憲論議がひとまず頓挫したことは間違いない。昨年、大統領となったばかりのエルドアン氏がレームダック(死に体)に陥るとの見方さえある。最大都市イスタンブールでは7日夜、反AKP派の市民らが花火を打ち上げるなどして同党の過半数割れを祝った。
一方、どのような組み合わせになっても、イデオロギーや民族的な支持基盤が異なる各党が連立を維持するのは困難とみられる。政治が不安定化すれば、それを是正するとの名目でエルドアン氏が早期の解散・総選挙に動くとの観測もあり、手負いの“スルタン”の闘争は今後も続く可能性が高い。(大内清/SANKEI EXPRESS)