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【逍遥の児】青春の市川で「さだまさし」展
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歌手、さだまさしさん(63)。長崎市出身。1965年、バイオリン修業のため上京した。中学生だった。その後、千葉県市川市に引っ越し、多感な青春時代を送った。
「第2の故郷」といえる市川市の芳澤ガーデンギャラリーで企画展「さだまさしミュージアム」(7月26日まで)が開催中。京成市川真間駅で下車。ゆるやかな坂道を登っていく。着いた。美術館は緑に包まれていた。
バイオリンやギター、楽譜、原稿、写真などを展示。興味深いのが、平川荘16号室。1970年代に暮らしたアパートを再現している。本人の言葉が記されていた。
--この部屋で死んだ夢より生まれたものの方がぜったい多かった。
企画した森綾子学芸員が笑顔で語る。「平川荘は取り壊されましたが、聞き取り調査を行い、できる限り忠実に再現しました」
布団を敷いたままの万年床。夏でも使っていた電気こたつ。ギター、ラジオ、文庫本などが雑然と並ぶ。主食は即席ラーメン。使用済みのティーバッグ(紅茶)を窓際に干し、何度も使い回して飲んだという。
バイトを掛け持ちして生活費を稼いだ。それでも金が足りない。切羽詰まって、大切なバイオリンを質に入れた。手にしたのはわずか3000円…。
「さださんはバイオリン奏者を目指したが、挫折した。この部屋で哲学書や詩集を読んだ。壁にもたれてギターを弾き、作曲した。人生の転機となった。平川荘はファンにとって聖地ともいえる場所です」
聖地か。現地に行ってみよう。館内でもらったイラスト入りの地図を手に国分2丁目を目指す。丘陵地。緑濃い森が残る。住宅地が広がる。石垣の上。アパートは姿を消し、白い2階建ての民家があった。初老の女性が語る。
「ここに平川荘がありました。昔、子供たちが『テレビに出ているのにどうしてこんなアパートに』っていってましたよ」
帰路。周辺を逍遥する。さださんが通ったという銭湯は健在だった。ふと、あの1970年代の青春を思い起こす。激烈だった。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)