SankeiBiz for mobile

【奥多摩だより】御岳山のクモ(東京都青梅市)

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのトレンド

【奥多摩だより】御岳山のクモ(東京都青梅市)

更新

御岳山のクモ=2015年5月30日、東京都青梅市(野村成次撮影)  東京都青梅市の御岳山(みたけさん)。関西の中学生だった50年前その地名を知った。小生がかわいかったころだ。旅行雑誌のアンケートで、東京都の行ってみたい場所を選べと地名がいっぱい並んでいる。友人が「御岳山って霧の名所らしいで」と言うから、そう答えて手紙を出したけれど、何も当たらなかった。その男だって、どんな場所なのか知らなかっただろう。

 初めて行ったのはこの仕事に就いて、御岳山を取材したときで40年も前になる。まだ若かったころだ。奥多摩の連載を始めてからは何度も行った。雨の山中で霧に包まれたことはあったけれど、霧の名所だとは思えない。まあ、友人も適当に知識をひけらかしたのだ。

 近頃は御岳山を敬遠している。お恥ずかしいが、どうも足腰の調子がよくない。坂道を考えるだけで気が重くなってくる。だけど連載の締め切りが近くなって、コケがきれいな岩石園の流れを見に行かざるを得なくなった。荷物を極力軽くして、意を決して登ってみた。6月初めの緑はやはり美しい。ここは自然が豊かだ。ミソサザイが鳴く。スズメより小さな茶色の鳥で、岩場の曲がり角で目の前にいた。鋭い高音で尾羽を立てて鳴く。それは渓谷に響き渡るのだ。

 コケは胞子嚢(のう)をいっぱい伸ばしている。マクロレンズでのぞいていたら、1センチほどの緑色の小さなクモがやってきた。コハナグモだろう。背中と腹の模様はどこか人の顔みたいだ。コケの間の糸を越えようとしているのは、走り高跳びの背面跳びを成功させて、ニッコリ笑っているように見える。

 このクモは特に珍客ではない。公園の植え込みなどで、注意深く探せば見つけられる。(SANKEI EXPRESS

 ■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。

ランキング