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繊細で内省的 南米へ誘う調べ ヴィニシウス・カントゥアリア、大貫妙子&小松亮太
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ブラジル出身のシンガー・ソングライター、ヴィニシウス・カントゥアリア=2013年11月8日(提供写真) 南米の音楽というと、いわゆるラテンと呼ばれる音楽のイメージが強い。例えば、サンバやサルサのようなにぎやかなダンスミュージックは、たしかにこのエリアでメジャーな存在だ。しかし、その一方で繊細でかつ内省的な音楽も存在する。その代表的なものが、ボサノバとタンゴ。前者はブラジルで1950年代に生まれ、静かでまったりとしたイメージが強いだろう。後者はいわゆるダンスのための音楽にもかかわらず、独特の哀愁を醸し出すのが特徴だ。タイプは違うが、日本人に人気があるということでも共通している。
ボサノバは爽やかな潮風の香りがするという印象もあるが、ヴィニシウス・カントゥアリアにかかれば、それは漆黒の夜の音楽へと変身する。ブラジルのアマゾンで生まれたヴィニシウスは、カエターノ・ヴェローゾをはじめ大物たちに認められてソロデビュー。その後、新天地を求めてニューヨークに渡り、都会的な現代ボサノバを作り続けている。
最新作「ヴィニシウス・カンタ・ジョビン」は、タイトル通りボサノバの創始者であるアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲を集めた企画盤。坂本龍一やメロディ・ガルドーといった豪華ゲストに目を奪われるが、「イパネマの娘」など聴きなれた旋律が深い闇に包まれていくような感覚は、他のボサノバでは味わえない。しかも、来日時に日本で録音したということもうれしい一作だ。
日本録音といえば、わが国を代表するタンゴのアーティスト、小松亮太の新作にも注目したい。バンドネオンというタンゴ特有のアコーディオンに似た楽器を演奏する彼は、本場アルゼンチンでも一目置かれる第一人者。新作「Tint」では、日本を代表するシンガー・ソングライターのひとりである大貫妙子とコンビを組んだ。お互いのオリジナル楽曲をメーンに、ノスタルジックなサウンドでタンゴを披露していく。
日本語詞で歌われていることもあって親しみやすい一方で、妥協のない小松の演奏が絡み合い、けっして雰囲気に流されるようなタンゴ作品にはなっていない。オールドスタイルにこだわったアレンジや、透明感のある歌声との調和はあくまでも彼ら流のオリジナル。本場のタンゴ以上に、メランコリックな気持ちにさせられる傑作だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)