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AIIB、きょう署名式 中国、新経済圏構想は「思想」先行
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中国・甘粛省蘭州市の「新区」で建設中のマンション=2015年6月9日(共同) 中国が主導して設立する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバー国は29日、北京で設立協定の署名式を開く。AIIBを通じて世界経済への影響力を拡大しようとする中国の戦略が、大きな節目を迎える。
習近平国家主席が各国の代表と面会する。各国の財務相による会合も開く。創設メンバーは57カ国で、アジアの発展途上国だけでなく英国、ドイツ、フランス、イタリアといった先進国も含まれる。各国の国内承認手続きを経て、年末に設立する。
習氏が2013年10月にAIIB構想を提唱して以降、中国は急ピッチで準備を進めてきた。今年5月には各国が設立協定に基本合意し、中国が最大の出資国として重要案件に拒否権を持つことなどを決めた。
習氏はアジアから欧州にかけての各国で現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想を掲げていて、AIIBは金融面で同構想を支える。アジアなどの社会基盤(インフラ)整備に資金を投じ、中国の存在感を高める。
AIIBは世界銀行や、日本が歴代の総裁を出しているアジア開発銀行(ADB)と役割が重なる。米国や日本は、AIIB運営の透明性確保などに懸念を持ち、参加を見送っている。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪中国、新経済圏構想は「思想」先行≫
AIIBとともに中国が推進する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」。陸路ルートが走る甘粛省では、国境をまたぐ鉄道網整備や貿易拡大を当て込む地元政府や経済界から「発展のまたとないチャンス」との声が相次ぐ。習近平指導部は一帯一路で地域経済を振興し、成長鈍化の食い止めを狙うが、構想の具体策は不明瞭で、効果は未知数。「期待先行」の印象はぬぐえない。
「これまでは輸出品を中国東部に送ることに力を入れてきたが、今後は中央アジアや欧州への輸出基盤づくりを進める」
習国家主席が2013年に一帯一路の「一帯」に当たる「シルクロード経済帯」建設を提唱して以降、甘粛省の企業はロシアやベラルーシへの投資を活発化。省幹部は「発展を目指す原動力になっている」と強調する。
同省から中央アジアなどへの14年の投資額は前年のゼロから10億ドル(約1200億円)に。貿易額も拡大し、各国と結んだ協定は80以上に上る。
省都蘭州市は12年から中心部の北約60キロの盆地に「新区」を建設中で、工業団地やマンションの工事が急ピッチで進む。
新区工作委員会の郭智強副書記は「蘭州は交通の要所。空路や鉄路を充実させ、自由貿易区も建設していく」と話す。昨年4月には機械大手が生産拠点を従業員約6000人とともに新区に移転してきた。
欧州との物流拡大を期待するのは、蘭州市から北西約200キロの武威市で民間物流センターを運営する「甘粛内陸港公司」の謝軼侖会長補佐。中国沿岸の港を経由した海運では約40日かかるが、鉄道だと2週間に短縮できると説明し「現在の1カ月5便を年末までに倍増させる。鉄路整備が進めば一層拡大できる」と話す。
観光業界や非鉄金属・化学工場大手などからも期待の声が上がり、農業関係者はナツメやタマネギなど「農産物の輸出増」への意欲を語る。
ただ、地元幹部や企業関係者らは、数値目標を含め一帯一路をめぐる具体的な計画について「まだ提示できる段階でない」「関係国の調査を進めている」などと慎重な言い回しに終始する。一帯一路は国家の戦略目標であり「中央から具体的な政策や予算が出ていない」(省幹部)ためだ。
甘粛省にとって、中央の振興策にはかつて苦い思いもあった。01年に本格推進が決まった内陸部振興策の西部大開発では一定の発展を遂げたものの、省民1人当たりの域内総生産は全国31ある省・自治区・直轄市の中で底辺に甘んじてきた。上海など沿岸地域との格差は依然として大きい。
「国内振興が柱だった西部大開発と違い、今回は国際的規模で突破する好機だ」。省幹部は巻き返しへ意欲を燃やす。(共同/SANKEI EXPRESS)