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【サッカー】なでしこ決勝へ 36歳澤、最後のW杯「一丸で戦う」
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決勝進出を決め、後輩たちを出迎え、抱き合って喜ぶ澤穂希(ほまれ、中央)=2015年7月1日、カナダ・アルバータ州エドモントン(共同) サッカーの女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会準決勝で1日、日本代表「なでしこジャパン」がイングランドを破り、前回に続いて決勝に進んだ。W杯6度目の澤穂希(さわ・ほまれ)選手(36)=INAC神戸=らの思いを乗せ、2連覇を狙う戦いはクライマックスを迎える。
澤にとって、今大会が6度目のW杯だ。準決勝は出場機会がなかったが、ベンチから後輩たちを鼓舞し、決勝の舞台へとたどりついた。「出ていない選手も含め、一丸になって戦う」。日本女子サッカー界のレジェンドがW杯最後の試合に臨む。
「どうすれば36歳であれだけのプレーをできるのか、不思議」。元女子代表で、クラブチームでも澤選手と苦楽をともにした加藤与恵(ともえ)さん(37)は驚きを隠さない。
自身は30歳で現役を引退したが、「その時ですら自分の体が『昔とは違う』と感じていた」という。
若い世代の起用を優先するチームの方針などもあり、昨年5月以降はなでしこジャパンから離れていた澤。不調をささやく声もあったが、加藤さんは「サッカーが楽しいと言っていたし、悲観的な感じはなかった」と話す。今大会も「体に切れがある。体調管理にすごく気を使っているはず」。
36歳というと、普通の選手であれば、けがが増え、世代交代も頭をちらつく時期。同世代の女性では結婚、出産を経験している人も多い。
「子供が欲しいという話もしていた」。こう明かすのは、澤選手を中学時代から指導し、現在も親交がある、Jリーグ、東京ヴェルディのゼネラルマネジャー竹本一彦さん(59)。「選手にとっては、結婚や子供について考えることもストレス要因になりうる。それを乗り越えてW杯の舞台に立っている」と精神的強さの一面を解説する。
澤選手は今大会期間中、国際サッカー連盟(FIFA)のインタビューに「私の最後のW杯になると思う」と明かした。「大事な場面で点を取るはず。そうやって彼女は『澤ストーリー』を作ってきた」。竹本さんは、活躍を確信している。
≪佐々木監督、際立つ人心掌握術≫
決勝進出を決めたなでしこジャパン。選手たちとの間に敷居を作らず、きめ細かな気配りをする佐々木則夫監督(57)が躍進を支える。
ときに「おやじギャグ」で選手の緊張をほぐし、的確な采配で勝利を引き寄せる。2007年12月の監督就任以来、そんなスタイルでチームを手塩にかけてきた佐々木監督。好成績の背景にあるのは選手からの厚い信頼だ。全選手に目配りし、やる気を維持させる掌握術は今大会でも際立つ。
1次リーグ3試合では登録23選手全員をピッチに送り出した。「全員に同じ緊張感を持たせたかった」と指揮官。決勝トーナメント1回戦のオランダ戦でミスから失点したGK海堀を信頼し、準々決勝、準決勝でも起用し続け、自信を取り戻させた。練習では、選手の意見を積極的に採用。準々決勝のオーストラリア戦翌日には、控え選手中心の練習で、選手側から「実戦形式の練習がしたい」との声が出た。当初は軽めの内容を予定していたが、練習の中にミニゲームを加えた。「控え組のやる気をくんでメニューを変えた」と笑顔で説明した。
元日本代表FWで大阪学芸高コーチの大谷未央(おおたに・みお)さんは「選手を信頼する監督の姿勢に選手が奮起する、いい雰囲気。選手にいろんな意見がある中、練習や試合中に監督とやりとりできることは大きい」とみる。
戦列を離れた選手への気配りも。佐々木監督は12年ロンドン五輪前年、負傷したFW丸山桂里奈(かりな、大阪高槻)の見舞いに、クマのぬいぐるみを持参した。今大会1次リーグ初戦で負傷して帰国したFW安藤にもクマのぬいぐるみを贈った。安藤の親友でもある丸山がブログで明かしている。
選手が女性であることへの配慮も忘れない。なでしこジャパンのコーチに就任した06年、妻の淳子さん、一人娘の千尋さんから「女の子は身だしなみをみている。鼻毛やお肌に気をつけて頑張ってね」と励まされた。いまでも身だしなみに細心の注意を払う。テレビのバラエティー番組チェックも欠かさず「間もなく60歳。流行へのアンテナを張っている」。
「女性からみると、清潔感や親しみやすさは大切」と大谷さん。10年にわたってなでしこを見守ってきた「父」は、決勝でも「娘たち」を温かく見守る。(榊輝朗、吉原知也/SANKEI EXPRESS)