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政治
新国立建設 検討チームで国と都歩み寄り
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新国立競技場の建設費用の負担をめぐり、東京都の舛添(ますぞえ)要一知事(右)と会談する遠藤利明五輪相=2016年7月8日午後、東京都新宿区・東京都庁(共同) 遠藤利明五輪相は8日、東京都の舛添(ますぞえ)要一知事と都庁で会談し、2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設をめぐり、東京都の費用負担の在り方を検討する作業チームを設置する方針で一致した。舛添知事は会談で「史上最高の大会にしようと準備を進めている。できるだけの協力はする」と述べ、前向きに協議する意向を示した。
作業チームは遠藤氏の下に置かれ、文部科学省や財務省など関係府省庁と、都の事務方で構成する。近く初会合を開き、早期の結論取りまとめを目指す。
一方、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は8日の記者会見で、新国立競技場に関し、2本の巨大なアーチで屋根を支える現在のデザインを維持すべきだとの考えを示した。「安易な変更はわが国の国際的信用を失墜しかねない」と述べた。
新国立競技場の費用負担問題をめぐっては、下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相が5月、総工費2520億円のうち500億円の負担を都に要請し、舛添知事は難色を示していた。この日の会談で舛添氏は、総工費を誰がどのように負担するか、全体像を示すよう求めつつ「都民が誇りを持てるものでなければならない。事務方で政府と協議を始めたい」と述べた。
遠藤五輪相は会談で都の負担額に言及しなかった。終了後、記者団に「前提条件をつけずに、一つ一つ事業を精査する」として、500億円にこだわらず検討する考えを強調した。とはいえ、膨張した総工費に対する批判は根強く、議論は曲折も予想される。
「経済効果などの便益を考えれば、そもそも都が費用を負担しないという選択肢はなかった。後はいかにして(舛添)知事のメンツをつぶさずに決着させるかだ」。ある議会関係者は国と協力して早急に落としどころを模索すべきだとの考えを示す。
都の費用負担をめぐっては、下村博文文部科学相と舛添知事が5月の会談以降、支出の根拠などで対立をエスカレートさせた。これに対し、舛添知事の選挙を支えた都議会最大会派の自民党が議会で、「都政の役割は国との対立構造を演出することではない」と苦言を呈した。
さらに2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「(知事は)学者さんだから(物言いが)きつい。まだ知事になりきっていないところがある」といさめ、舛添知事も態度を軟化せざるを得なくなった。
遠藤五輪相との8日の会談で「こういう形で都が負担できますね、と一つ一つ議論していきましょう」と前向きな姿勢を見せた舛添知事。しかし、都の負担も含めて財源確保の見通しが立たないままスタートした巨額の公共事業に、都民や国民の不信感は高まっている。
ある都幹部は「新国立競技場にマイナスのイメージが定着してしまい、費用負担を認めるのは容易ではない。五輪の成功のために、なんとか前向きな議論をしていきたい」と話した。(SANKEI EXPRESS)