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経済
東証今年最大638円安 2万円割る 中国経済懸念・ギリシャ問題
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終値で今年最大の下げ幅を記録した日経平均株価を示すボード=2016年7月8日午後、東京・八重洲(共同) 8日の東京株式市場は、中国・上海市場の株価急落やギリシャ債務問題の先行き懸念を受け投資家のリスク回避姿勢が強まり、日経平均株価が今年最大の下落となった。平均株価の終値は前日比638円95銭安の1万9737円64銭と、6月18日以来約3週間ぶりに2万円の大台を割り込んだ。ギリシャ問題に、日本と結びつきの強い中国経済の先行き懸念が追い打ちをかけた。
平均株価は、終値では5月15日以来約2カ月ぶりの安値水準となった。上海株が一時、8%超急落するなどアジア株式市場が軒並み下落したことで、午後に入ると売りの勢いが強まり、心理的節目の2万円を下回り、この日の安値で取引を終えた。出来高は約31億9500万株だった。
東証第1部に占める値下がり銘柄の割合は取引終了時点で約97%に達し、全面安の展開となった。また、ギリシャ問題では7日(日本時間8日未明)にユーロ圏首脳会議が開かれたが進展がみられず、金融支援協議に先行き不透明感があることも引き続き投資家心理を悪化させた。
市場関係者からは「(企業業績の拡大など)日本国内の環境は特に悪くなく、『2万円は割らないだろう』との安心感もあっただけに、すんなり下回ったことで動揺が走り、下げ幅拡大につながった」(大手証券)との声が聞かれた。一方、東京外国為替市場では安全資産とされる円が買われ、円は1ドル=121円台半ばまで上昇。対ドルでは一時121円43銭と、前日に比べ1円超上昇する場面があった。
≪上海株てこ入れ不発 「爆買い」打撃も≫
中国の株式市場の下落に歯止めがかからない。中国政府はなりふり構わずに株価てこ入れ策を打ち出しているが、上海総合指数はこの1カ月で約3割も急落。上海や深●(=土へんに川)の株式市場では、自社株の下落を恐れる企業が相次いで証券取引所に自社株の売買停止を申請。8日時点の売買停止銘柄は1400を超え、全体の半数を超える「前代未聞の事態」(大手証券)となった。
中国の株式取引の8割を占める個人投資家の不安心理は高まっており、8日の上海株式市場は一時、前日終値から8%超下落。終値は5.9%安の3507.19だった。
急落を受けて中国人民銀行(中央銀行)は急遽(きゅうきょ)、証券会社への融資を手がける金融機関向けの資金繰り支援策を表明した。この日は中国国有企業の監督当局も、国有企業の上場子会社の株主による株式の売買停止といった相場安定策を発表。保険監督当局も、保険会社による株式投資の上限引き上げを発表するなど、慌てて打ち出された市場対策が、中国政府の動揺ぶりを浮き彫りにした。
昨年11月の利下げ以降、上海総合指数は高値で推移。年初から6月12日にかけて約60%上昇。過熱感から、その後は一転して約30%下落した。この間も、中国人民銀が追加の利下げを実施したり、証券会社21社が総額1200億元(約2兆4000億円)の上場投資信託(ETF)購入を発表。だが、官民を挙げたてこ入れはほぼ不発に終わった。
中国は15日に4~6月期の経済成長率の発表を控えており、政府目標の7%を下回れば売り圧力が一段と強まりかねない。
上海株の下落基調が止まらないことで、訪日中国人観光客の「爆買い」に沸く日本の百貨店や旅行などの関連業界にも動揺が広がっている。中国人個人投資家の損失拡大が堅調だった訪日客消費に水を差さないか、上海株の値動きに気をもんでいる。
高島屋では今年3月以降、外国人向けの売上高が前年同月比3~4倍と飛躍的な伸びを続けている。販売を押し上げているのが中国人の爆買いだ。国内の需要が伸び悩むなか、「消費を下支えしており、中国株の変調が長期化すれば中国人客の来店が落ちて業績に影響が出る可能性もある」と警戒する。
爆買いはスーパーやコンビニエンスストアの売り上げ増にも寄与しており、イオンの若生信弥(わこう・しんや)執行役は8日の決算会見で「中国の株価下落は大変警戒している」と、懸念を示した。
観光業界も同様だ。藤田観光では昨年、自社宿泊施設に79万人の訪日客が宿泊し、うち3割を中国人が占めた。JTBでは、現在のような上海株の下落が続けば、「来年2月の春節(旧正月)頃に何らかの影響が出てくる可能性も否定できない」と指摘する。
子供用紙おむつ市場で高機能不織布を生産する三井化学は「国内工場がフル稼働状態」というが、投資計画に影響が出る恐れもありそうだ。(SANKEI EXPRESS)