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経済
上海株乱高下 東京株を翻弄 中国、報道に緊急通達「批判を妨げ」
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証券会社の店頭で、反転上昇する株価の動き示す電光掲示板を見つめる投資家=2015年7月9日、中国・首都北京市(ロイター) 9日の上海市場の株価は急反発し、代表的な指数である総合指数の終値は前日比5.76%高の3709.33となった。前日に終値で5.9%急落した流れを受け、朝方は下げ幅がさらに3%超に達したが、その後は買い注文が殺到して急騰し値動きの荒い展開となった。
一方、9日の東京株式市場も上海株に翻弄され、日経平均株価(225種)が乱高下した。一時は下げ幅が622円に達したが、その後、上海株につられる形で上昇に転じ、この日の最高値である前日比117円86銭高の1万9855円50銭で取引を終えた。最安値との差は740円を超え投資家の動揺を映し出した。
上海市場では、中国人民銀行(中央銀行)や中国証券監督管理委員会は相次いで株価対策を打ち出した。連日の下落で割安感の出た銘柄を買い戻す動きも強まり、一時6%高まで上昇する場面もあった。ただ、取引停止を申請する上場企業は引き続き増加し、中国メディアによると、9日は上海と深●(=土へんに川)の両市場で全体の半数を超える約1600銘柄が取引を停止した。
一方、東京市場では前日の米国株の大幅安を嫌気し、平均株価は午前中に1万9115円20銭まで下げた。しかし、午後に上海株が大幅高になると状況が一変。東京市場でも買い戻しの動きが勢いを増して平均株価は急速に値を戻し、上げに転じた。出来高は今年最大の約37億1100万株に上った。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は9日の記者会見で「日本のシステムは極めて安全、健全であるためプラスに転じた」と強調した。ただ、市場関係者は「中国のバブル崩壊は、ギリシャ問題より世界の実体経済に与える影響が大きいと考えられ、相場は神経質に反応している」と話す。
≪中国、報道に緊急通達「批判を妨げ」≫
9日の上海株は反発し、ひとまずは一段の状況悪化を食い止めた形だ。中国当局が先月末から次々と打ち出した大型株価対策の効果がようやく表れたようにも見えるが、先行き不安は高まるばかりだ。共産党中央宣伝部が国内報道機関に対して、株価下落が政治問題化するのを避けるよう指示する緊急通達を出すなど、不満の矛先が習近平指導部に向かうのを防ごうと躍起だが、「市場原理を無視している」といった批判が強まっている。
中国当局は当初、金利の引き下げなどによる金融政策で株価の急落に対応しようとしたが、株価下落に歯止めがかからず、市場への露骨な介入に転じた。
証券監督管理委員会は4日、全国の大手の証券会社21社のトップを北京に集めて対策会議を開催。証券会社が総額1200億元(約2兆4000億円)を出資して株価を下支えする対策を打ち出した。
また市場の需給悪化を防ぐため、突然、IPO(新規株式公開)の延期も発表。準備を重ねてきた多くの企業と投資家に不満が広がった。
さらに、今回の株暴落の原因は一部の投資家による「空売り」だと考えた当局は9日、公安省の孟慶豊次官を証券監督当局に派遣し、「悪意のある株式や株価指数先物の空売りを厳しく取り締まる」と発表した。
投資家の間では「空売りは市場行為なのに、警察が出てくるのがおかしい」との反発が出ている。
中国当局がここまで株価に神経をとがらせる理由は、株が下落すれば都市部を中心とする約2億人の国内投資家が動揺し、社会不安が広がることを警戒しているためだ。
インサイダー取引などの疑惑が絶えない中国市場に対する投資家の不信感は根強い。
中国の実体経済は、輸出の低迷などで成長鈍化に歯止めがかからない状況にある。株価下落が上場企業の資金繰りを悪化させたり、個人消費や不動産市況に悪影響を及ぼしたりして、景気失速に拍車がかかり、投資家にとどまらず国民全体の批判が習政権に向かいかねない。
こうした中、共産党中央宣伝部が国内報道機関に「(株価下落が)政治化するのを回避し、(批判の)矛先が共産党や政府に向かうのを防げ」とする通達を出していたことが9日判明した。通達では「投資家が理性的に株式相場の動向を予想できるよう世論を誘導する」「経済政策の成果を宣伝し、中国経済の先行きを前向きに伝える」などの指示が盛り込まれており、世論誘導の意図は明白だ。
北京の金融関係者は「株価が下がれば政府が何とかしてくれるという裏付けのない期待を国民に与えてしまった。将来に大きな禍根を残すだろう」と話した。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)