ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
全人代閉幕 70年談話で首相牽制 「反腐敗を継続」 拭えぬ派閥間争い
更新
閉幕式を迎えた中国全人代=2015年3月15日、中国・首都北京市西城区の人民大会堂(共同) 北京で開かれていた中国・全国人民代表大会(全人代=国会)は15日、経済成長目標を年7%前後に引き下げた政府活動報告などを採択して閉幕した。閉幕後の内外記者会見で、李克強首相(59)は、今年の日中関係について、「一国の指導者は、先人の業績を継承するだけでなく、その罪による歴史の責任も負わなければならない」と述べ、戦後70年談話を準備中の安倍晋三首相(60)を牽制(けんせい)した。
会見で李氏は、当面の日中関係がなお「困難」な状況にあるとの認識を示し、その原因は日中戦争にあると指摘。「日本の指導者が歴史を直視し、中日関係の改善と発展に一貫して取り組むなら、新たなチャンスとなる」と述べた。
李氏は、「日本軍国主義」による中国の戦争被害に言及すると同時に、「日本の民衆も被害者だ」と述べた。また、日中関係の改善が、両国間の経済貿易関係を発展させる条件ともなると指摘した。
中国経済については、2015年の国内総生産(GDP)の成長率目標を7.0%前後に下げたことについて、「目標の実現は容易ではない」とした上で、必要に応じて景気刺激策を打ち出す考えを示した。また、党要人らが相次ぎ失脚している汚職摘発についても、継続を表明した。
全人代最終日の採決では、習近平政権の施政方針を示す政府活動報告が99%以上の賛成票で承認されたほか、汚職高官らの摘発に触れた司法関連報告も例年より高い支持を集めた。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS)
≪「反腐敗を継続」 拭えぬ派閥間争い≫
中国の李克強首相は15日、全人代(国会)閉幕後の記者会見で、習近平指導部が主導する反腐敗キャンペーンについて「地位の高い人々も調査と処罰の対象になっており、国民の支持を得ている」と述べた。当局が今後も、高官を対象とする汚職摘発運動を継続することをアピールしているようだ。
首相の会見終了後の15日午後1時頃、タイミングを計ったかのように、国営新華社通信が「雲南省の仇和副書記が党紀・法律違反の疑いで調査を受けている」というニュースを流した。
「トラもハエもたたく」をスローガンとする反腐敗運動で、昨年中に収賄や横領などで摘発された公務員は5万5000人を超え、閣僚級高官は28人に達した。1949年の新中国建国以降、経済問題で失脚した高官が最も多い年となった。
しかし、元高級幹部の子弟で構成され、習主席自身も属する派閥、太子党からは失脚者は一人も出ていない。このため、党内の派閥間の主導権争いという面があることを印象づける。
捜査を担当する党の規律部門は当事者や周辺に察知されないよう内偵を進め、ある日突然、食事や会議などの場に捜査員が現れて本人を拘束するケースが多い。15日に拘束された仇和氏も、前日に開かれた全人代に出席したことが確認されている。党の規律部門のトップは習主席の盟友で、同じく太子党の王岐山・党政治局常務委員だ。
昆明市党委書記などを歴任した仇和氏は、老朽化住宅の再建などで辣腕(らつわん)を振るい、改革派指導者の一人として中国メディアによく取り上げられ、高い知名度を誇る。同時に、李源潮国家副主席の長年の部下で、腹心の一人としても知られ、失脚は大きな波紋を広げている。共産党関係者の間で「本当の狙いは李源潮副主席ではないか」といった観測が流れている。
李副主席は昨年末に失脚した令計画・前党中央統一戦線部長と同じく、胡錦濤前国家主席が率いる派閥、共青団派の有力者で、2017年に開かれる次期党大会で最高指導部入りが確実視されている。
李氏の側近とされる重要幹部が汚職などの名目で次々と拘束される事態に、ある共産党関係者は「李氏の外堀が埋められつつある」と指摘する一方、「李氏が失脚するようなことがあれば、一大党内抗争を誘発しかねない」と話している。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)