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国際
中国が称賛する日本のサッカー文化
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尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる問題や歴史認識問題で、いまだに反日感情が渦巻く中国だが、ことサッカーに関しては風向きが違う。中国のインターネット上では、女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会で準優勝した「なでしこジャパン」に惜しみない賛辞が贈られているだけでなく、男子のU-18(18歳以下)日本代表の試合後の行動も称賛されている。中国のサッカーファンにとって、日本サッカーは“仇敵(きゅうてき)”であると同時に、“手本”でもあるようだ。
女子W杯カナダ大会について、中国国内の注目は当然、中国代表に向いていた。大方の予想を覆し、中国代表は予選リーグを突破して決勝トーナメントに進出。準々決勝で優勝した米国に0-1で敗れたものの、中国国内では“大躍進”との評価を得ていた。
当初、なでしこジャパンは、中国国内でも、優勝した前回大会ほどの強さはないとみられていた。しかし、予選リーグから唯一、全勝で決勝まで進むと、見る目が変わった。歴然とした体格差にもかかわらず、欧米の強豪と渡り合う戦術には「世界最高」という言葉が贈られた。
また、しばしば中国代表に欠けていると指摘される「団結力」に対する評価も高かった。米国との決勝では試合序盤で4失点を喫したが、中国のネットメディアは「最後まで諦めない精神力は学ぶべき、尊敬すべきものだ」とたたえた。
なでしこジャパンについては辛口の評価もあった。中国共産党機関紙、人民日報のニュースサイト「人民網」によると、成都日報は、決勝戦での大敗を、「根本的な原因は、日本チームが弱かったことにある」「アジア女子サッカーを代表する日本チームの実力は、すでに世界トップレベルに達している、と言えるほどではなかった」と総括した。
しかし、それはなでしこジャパンを批判するものではない。日本が完敗したことは、中国にとっても大きなショックだったのだ。「日本女子チームに追い付き追い越すことを目標とした中国女子チームにとって、両チームにはまだ大きな実力の差がある」-。
中国よりも実力が上と認めるなでしこジャパンの組織的なサッカーが、パワープレーや身長・体格を生かしたディフェンス力が主流となっている世界の女子サッカーの潮流に屈したとすれば、中国の女子サッカーは今後、目指す方向をどこに置けばいいのか、という迷いが見え隠れする。
中国国内では最近、なでしこジャパン以外にもサッカーファンの心をつかんだ日本代表が存在する。6月下旬、四川省成都市で開催された「パンダ・カップ2015」に出場した男子のU-18日本代表である。
大会には開催国の中国のほか、日本、スロバキア、キルギスのU-18代表が参加した。日本代表は初戦、キルギスを6-0で下すと、続く中国戦は5-1、最終戦のスロバキア戦も2-1と3連勝を飾り、優勝した。中国のネットメディアは、日本の豊富な攻撃パターンを称賛した。だが、中国のサッカーファンが最も感服したのはプレーではない。
6月24日に行われたキルギス戦の試合終了後、日本代表はスタンドのサポーターに向かって深々とお辞儀をして、応援に謝意を示した。サッカーではおなじみの光景だが、違ったのはスタンドにいた日本サポーターがたった一人だったこと。その一人のサポーターに対する態度は、中国のサッカーファンには衝撃的だった。
その様子を撮影した中国のサッカーファンは、「今年撮影した写真の中で最高の一枚だ」と述べている。中国のネットメディアは、「パフォーマンスなどではなく、国と地域のサッカー文化、国民の素養が結集した表現だ」としたという。
なでしこジャパンの宮間あや主将(30)は決勝戦を前に、「(女子サッカーを)ブームではなく文化に」と述べた。少なくとも中国のサッカーファンは、なでしこジャパンを、日本のサッカーを、「文化」として認めているようだ。(中国総局 川越一(かわごえ・はじめ)/SANKEI EXPRESS)