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カルテ開示義務 4割超「知らない」 厚労省、「患者の権利」周知不足浮き彫り

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カルテ開示義務 4割超「知らない」 厚労省、「患者の権利」周知不足浮き彫り

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東京都内にある病院の受付窓口。厚生労働省の調査では、カルテの開示を請求した患者は全国で1割にも満たなかった=2005年、東京都内(瀧誠四郎撮影)  患者の権利確保の実情を把握しようと、厚生労働省の検討会が昨年12月~今年1月にかけて、過去半年以内に入院や通院の経験がある男女5000人に「医療機関のカルテ開示義務」を知っているかどうか聞いた結果、4割超が「知らない」と答えたことが20日、分かった。実際に開示を求めたことがあるとした人は1割に満たなかった。

 厚労省が患者の求めに応じた開示義務を医療現場向けの指針に盛り込んでから10年以上たつが、患者が自らの症状や、治療方針、経過を理解するための制度が十分に周知されていない現状が浮き彫りになった。

 「国民に普及、啓発を」

 調査は、患者への差別や偏見が相次いだハンセン病問題の再発防止に関する厚労省の検討会が実施。患者の権利を守る取り組みの実態把握に向け、さまざまな疾患で入院や通院をした20代以上の男女5000人を対象にインターネット上で質問し、全員から回答を得た。

 カルテ開示義務を「知っている」としたのは57.8%で、「知らない」は42.2%。自身の診療内容の開示を求めたことがあるのは6.2%にとどまった。開示を求めたことがある患者は、81.8%が「カルテが役に立った」としている。

 カルテ開示は、患者と医師との信頼に基づく「安心・安全な医療」の実現に有効との指摘もあり、検討会の座長を務める多田羅浩三・大阪大名誉教授(公衆衛生)は「医療従事者よりも立場が弱い患者の権利を守るためにも、国は開示義務が国民に十分認識されるよう普及、啓発に努める必要がある」としている。

 医療事故の遺族で「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之さん(74)は「カルテは自分たちのものと思っている医療関係者がまだ多いのではないか。カルテを見ることで患者は自分の病状をより理解できる。開示義務があることを医療機関が患者に知らせ、国は医療関係者を教育する必要がある」と話した。

 積極的に請求促す機関も

 こうしたなか、積極的に開示請求を促す医療機関もある。

 「医療従事者と患者さまとのより良い信頼関係を築くために、カルテ開示(請求)をお勧めしています」。京都市の「京都民医連中央病院」は病床数400超の総合病院。2007年11月から、院内に患者や家族向けの張り紙を掲示している。

 特に小児科では、病状をより理解してもらうため入院患者のカルテを毎日家族に手渡しており、松原為人副院長は「治療方針や疾患に対する患者の考えも知ることができる。医療従事者にとっても開示は有益だ」と、その意義を強調する。

 とはいえ、厚労省の調査結果からは、京都民医連中央病院のように積極的な医療機関は珍しいといえる。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」の勝村久司さん(54)は「古くから医療界にあった、患者は医者の言う通りにしていればいいという風潮が、今も一部に残っているのではないか」と指摘。患者の請求の有無にかかわらず、医療機関側が開示するよう訴える。(SANKEI EXPRESS

 ■カルテの開示義務 厚生労働省は2003年9月、「診療情報の提供等に関する指針」を作成。医師や薬剤師、医療機関の管理者ら医療従事者は、患者の求めがあった場合、第三者の利益を害する恐れがあるときを除き、カルテや処方箋、手術記録といった診療記録を原則開示しなければならないと規定している。一方、05年4月施行の個人情報保護法も、カルテなど5000人分以上の個人情報を扱う医療機関は、患者の求めに応じて診療記録を開示するよう義務付けている。

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