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【アメリカを読む】クリントン氏、中間層重視の思惑
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米ニューヨークのニュースクール大学で行った演説で、舌鋒鋭く共和党の経済政策を批判するヒラリー・クリントン前国務長官=2015年7月13日(AP) 2016年米大統領選で民主党の最有力候補とされるヒラリー・クリントン前国務長官(67)が経済政策での共和党批判を強めている。最近はジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)の失言を蒸し返したり、賃上げを促すための税制改革を提案するなど、「中間層に寄り添う大統領」のイメージを築こうと躍起になっている。背景にあるのは華やかなキャリアを歩んできたクリントン氏への嫌悪感の根強さだ。クリントン家が主宰する「クリントン財団」の資金源をめぐる問題などイメージダウンにつながる火種も多いだけに、共和党攻撃は最大の防御になるとの思惑もあるようだ。
「この20年間、民主党の大統領は2度も、共和党の大統領の失政の後始末をせねばならなかった」。クリントン氏は13日、ニューヨーク州での演説で、経済成長に重きを置く共和党の政策をあげつらった。
クリントン氏が張る論陣は、共和党は大企業や富裕層に有利な経済政策をとれば経済成長を通じて中低所得層にも恩恵が行き渡ると考えているが、実際には財政赤字を招くだけだったというものだ。演説では、夫のビル・クリントン元大統領(68)やバラク・オバマ大統領(53)が直前の共和党政権時代に端を発した財政赤字拡大を食い止めた実績を強調して共和党批判を展開した。
さらにクリントン氏はスコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事(47)が公務員の団体交渉権を制限する法律を成立させたことを「労働者の権利を踏みにじって名を上げた」と糾弾。マルコ・ルビオ上院議員(44)の税制改革案については「超富裕層への大盤振る舞い」になっていると皮肉った。
またジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が8日に「人々は今よりも長い時間働くべきだ」と発言したことも批判。長時間勤務をこなす看護師や運転手などを例に挙げ、「彼らが必要としているのはお説教ではなく、賃上げだ」と反論した。
その一方で、クリントン氏が自らの政策として打ち出すのは「経済成長と公正さの両立」だ。共和党候補と同様に企業活動を後押ししつつ、同時に中間層や低所得層への所得配分を進めることで、格差の解消を狙っている。16日のニューハンプシャー州での政治集会では、従業員の賃金を積み増した企業に2年間の税制優遇措置をとる政策を発表した。
クリントン氏が中間層重視の姿勢をことさらに強調する背景には、有権者の間でのクリントン氏のイメージが低下していることにある。AP通信が16日に発表した世論調査によると、クリントン氏を「好ましい」とした回答者の割合は全体の39%で4月時点の46%から大きく低下。一方、「好ましくない」との回答は49%で、出馬表明した4月の41%から跳ね上がっている。
ファーストレディー時代から20年以上にわたって世間の注目を集めてきたクリントン氏には、「中間層からかけ離れた存在」というマイナスイメージがつきまとう。このためこれまでの選挙戦を通じて中間層の家庭で育った出自や、2011年に母親を病院でみとったこと、初孫が産まれたばかりのおばあちゃんであることなどのエピソードに触れ、中間層が抱える悩みを共有できることをアピールしてきた。
しかし先述の調査ではクリントン氏への「心優しい」との評価は40%、「正直」との評価は31%でしかない。AP通信は「有権者はクリントン氏のイメージ回復作戦を受け入れていないようだ」としている。
クリントン氏はニューヨーク州選出の上院議員だった当時から「ウォールストリートに近い」とみられてきた。また国務長官在任中に公務で私用メールアドレスを使っていた問題では説明が不十分だと批判され、クリントン財団が外国政府などから巨額の献金を受けてきたという大統領としての資質を問われかねない問題も抱えている。民主党の候補者指名争いでは圧倒的なリードを保っているが、共和党候補と対決する本選に入れば、こうしたマイナスイメージが命取りになる可能性もある。
クリントン氏が「共和党は大企業、富裕層寄りだ」と批判するのは、自らが同じイメージを持たれていることの裏返し。民主党の支持基盤であるリベラル層を固め、浮動票を取り込むためにはイメージの立て直しが必要になりそうだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)