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【アメリカを読む】大統領選 台頭する「ジェネレーションX」
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「ジェネレーションX」(X世代)の代表的政治家であるマルコ・ルビオ上院議員(中央)。家族を伴って行った大統領選への出馬表明で、「この戦いは『世代の選択』になる」と公言した=2015年4月13日、米フロリダ州マイアミ(AP) 2016年の次期米大統領選では「ジェネレーションX」(X世代)が脚光を浴びることになる。共和党の候補者指名争いでしのぎを削っているのは、1980年代から90年代に多感な青年期を過ごした、30代半ばから50歳くらいまでの世代だ。
スコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事(47)、マルコ・ルビオ上院議員(44)、テッド・クルーズ上院議員(44)がこの世代に当たる。ランド・ポール上院議員(52)をX世代の一人として数えることもある。
「われわれの世代が、新たなアメリカの世紀へと導くときが来たのです」
ルビオ氏は4月の出馬表明でこう述べた。
バラク・オバマ米大統領(53)、共和党のライバル、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)、民主党の最有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官(67)はいずれも第二次大戦後のベビーブーム世代に区分される。ルビオ氏はX世代の時代が到来したと高らかに宣言したのだ。
X世代は75年のベトナム戦争終結後に10代を過ごし、音楽専門チャンネルMTVが発信するポップカルチャーやテレビゲームに触れて成長した。「しらけ世代」とも評されるが、その一方で、政治的にみると共和党政権のロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)両元大統領から強い影響を受けているのも特徴だ。
「ソ連による政治的、経済的な抑圧をひるむことなく批判したレーガン大統領と同じように、尻込みをすることなく中国が13億人の国民に真の自由を与えるよう求める必要がある」
ニューヨークで5月に行った外交演説でこう述べたルビオ氏だけでなく、X世代の共和党候補たちはレーガン氏を党が輝いていた時代の代表として演説で取り上げることが多い。
18歳のときに誰が大統領だったかが、その後の政治志向に持続的な影響を与える-。
米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査でこんな事実が明らかになっている。主要候補が18歳のときの大統領を調べると結果が裏付けられた。(敬称略)
《民主》▽クリントン=リンドン・ジョンソン(民主)
《共和》▽ブッシュ=リチャード・ニクソン(共和)▽ポール=ジミー・カーター(民主)、レーガン(共和)▽ウォーカー=レーガン▽ルビオ=父ブッシュ(共和)▽クルーズ=レーガン、父ブッシュ
ちなみに、オバマ氏が18歳だったのはカーター氏の時代だった。
ピュー・リサーチ・センターの調査では、レーガン、父ブッシュの時代に18歳だった前期X世代は全国平均よりも共和党に投票する傾向が強く、クリントン元大統領からオバマ氏の時代に18歳を迎えた80年代生まれを中心とする後期X世代や「ミレニアル世代」は、民主党に投票する傾向が強いことが分かった。
今年4月末にセンターが発表した論文によると、こうした傾向はオバマ氏と共和党のミット・ロムニー氏が戦った12年大統領選にも影響を与えた。レーガン、父ブッシュ世代はロムニー氏に5ポイント多く、クリントン世代はオバマ氏に10ポイント多く投票したと分析している。
ただ、不人気な大統領のときに18歳を迎えた世代は、他党に投票する傾向が強いということも分かっている。ニクソン世代は5ポイント、ブッシュ前大統領世代は19ポイント、それぞれオバマ氏により多く投票していた。
そのため、ジェブ・ブッシュ氏は、イラク戦争の長期化により支持を失った兄ではなく父の政治的な「遺産」をクローズアップしようとしている。
今月、ベルリンで演説したブッシュ氏は、1989年11月の「ベルリンの壁」崩壊に果たした父の役割を強調し、「ドイツは統一され、自由になった」と述べた。だが、間違った情報をもとにイラク戦争に巻き込んだとして、欧州では不人気な兄には一言も触れなかった。
共和党では、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」掃討作戦でイラクやシリアへの介入を強化するかをめぐり議論が分かれている。
東西冷戦を終わらせたレーガン、父ブッシュ両元大統領を原体験とするX世代が、共和党や米国をどう率いようとするかに注目したい。(ワシントン支局 加納宏幸(かのう・ひろゆき)/SANKEI EXPRESS)