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喜劇王へのオマージュ 随所に 映画「チャップリンからの贈りもの」 ユージーン・チャプリン
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「事件は人間の想像を超えたもので、遺体の誘拐を知った私は絶句しました」と振り返るユージーン・チャプリンさん=2015年5月26日、東京都港区(野村成次撮影) チャールズ・チャプリン(1889~1977年)のひつぎを“誘拐”して身代金を要求する-。という何ともばかげた実話をベースに、フランスのグザヴィエ・ボーヴォワ監督(48)が随所に喜劇王へのオマージュを散りばめた心温まる人間ドラマを仕立て上げた。タイトルは「チャップリンからの贈りもの」。このあまりにも不謹慎な事件の映画化に賛成し、遺族の一人として全面的に協力したチャプリンの四男、ユージーン・チャプリン(61)が先日、本作のプロモーションで来日した。
SANKEI EXPRESSの取材に応じたユージーンは「もし父が天国でこの映画を見たら、まずは『自分に美しいオマージュをささげてくれた作品が完成したこと自体がうれしい』と感じてくれるでしょう」と偉大なる父親の気持ちを推し量った。ユージーン自らも「作品には『ヒューマニズム』という父の精神がきちんと受け継がれているばかりか、物語もオリジナルで興味深いものでした。感動しましたよ。この作品を見た大勢の人たちが私に『この作品が好きだよ』と声をかけてくれるのも理解できます」と、熱心に映画化を訴え続けたボーヴォワ監督に謝意を示した。
1978年、スイス・レマン湖畔の小さな町、ヴヴェイ。刑務所を出所したばかりのお調子者のエディ(ブノワ・ポールヴールド)と、真面目にコツコツと働く友達のオスマン(ロシュディ・ゼム)はともに移民で、なかなか安定した職に就けず生活は苦しい。オスマンは入院した妻の医療費すら捻出できない状況だ。そんなとき、2人は自宅の目と鼻の先で暮らしているチャプリンが死去したことをテレビのニュースで知る。
ユージーンら遺族は、これまでに何度も事件の映画化やテレビドラマ化を持ちかけられたことがあった。いずれも喜劇ばかりで、心を動かされることはなかったそうだ。だからボーヴォワ監督の申し出についても「最初は(オファー自体への)驚きが50%」といったところだった。
では、なぜ映画化に協力を申し出たのだろう。「よくよく監督の人となりを調べてみたら、あのカンヌ国際映画祭でグランプリや審査員賞を手にしたこともある才能豊かな人物だと知りました。そこが大きかったです。もっとも、遺族側に映画化を決定する権利自体があったわけではありませんでしたが、遺族に反対する者はなく、作品がドラマということもあり、味付けはご自由にという気持ちでした」。ボーヴォワ監督にチャプリンの墓地や邸宅でロケを行わせるなど最大の誠意を示した。
かつてサーカスの芸術監督を務めていたユージーンは、映画に登場するサーカス団の手配や演出を買って出たほか、自らも支配人の役で本作に登場している。父と同じ道に進みたいと考えたことはなかったのか? 「若い頃は誰でも一度は『俳優になりたい』と考えることがありますが、僕は父を見てすぐに『自分には向いていない』と悟りました。むしろ、大仕掛けな見せ物で観客を圧倒するような舞台の監督やプロデューサーになりたいと考えていましたね。今、あえて映画の分野で何かしようという興味はありません。父の時代に比べ、映画の作り方ははるかに進化を遂げてしまい、よく分かりません。でも、映画館に行くことは大好きですよ」。東京・YEBISU GARDEN CINEMAなどで公開中。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS)
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