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【奥多摩だより】花の別れ(東京都府中市)

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【奥多摩だより】花の別れ(東京都府中市)

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花の別れ=2015年7月11日、東京都府中市(野村成次撮影)  東京都府中市の多摩川近く、郷土の森公園にオミナエシが咲いていた。今月中旬の真夏日が続いていたころだ。秋の七草の一つで、通常は8月ぐらいから咲くから、ちょっと早いか。早咲きの種もあるから、それかもしれない。この黄色い花は、ほんの数ミリの小さな花がたくさん集まっているもので、もう散りだしているのもある。細いクモの糸に、一輪ぶら下がって風に揺れている。咲いたばかりなのに、もう仲間に別れを告げているようだ。

 奥多摩の夏雲を撮りたいのだが、しばらく余裕がなかった。個人的なことで恐縮だが、母親が煩っていて、週末は南東北の街の郊外の施設に通っていた。泊まり込んで早朝に外へ出ると、「カッコウ、カッコウ」と聞こえてくる。目覚まし時計をいつまで鳴らしているのだと思ったが、本物だった。少し木が茂っているところでは、あちらこちらで鳴いている。その声は、奥多摩では聞いたことはない。生息しているのだろうが。

 少し歩けば周囲は水田地帯だ。キジが絞り出すような声で鳴く。あぜ道を何かが走った、間違いなくキツネだ。病室でそんな話をしていたら、意識の薄れた母は「フン、また撮り逃したのか」と、夢の中で息子を叱咤(しった)していたかもしれない。そんな老いた花は、今月上旬に散った。

 さて奥多摩だ。夏も涼しいですかと尋ねられるが、とんでもない。都心と変わることなく立派に暑い。その中を坂道を登ったり下ったり、ペットボトルの水など、あっと言う間に空になる。夏場にもよく出かけて、よく熱中症にならなかったものだ。ところが、これっといったネタに出合ったら、暑いも寒いも忘れてしまう。撮影に熱中してしまうので、熱中症が入り込む余地がないのかも。

 母の施設にこの連載を送っていたが、受け取る人がいなくなってしまった。(野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。

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