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【アメリカを読む】「ウーバー論争」 大統領選でも争点に
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自らが高く評価する「ウーバー」を利用して移動する共和党のジェブ・ブッシュ氏。ウーバーのビジネスモデルの是非が、大統領選の新たな争点として浮上している=2015年7月16日、米カリフォルニア州サンフランシスコ(AP) 世界で新型の配車サービスを展開するベンチャー企業「ウーバー」のビジネスモデルの是非が米国で論争の的になっている。2009年創業のウーバーはITを活用したサービス開発で市場を開拓し、新たな雇用も創出してきた。しかし一方では、ウーバーのように専業の従業員を極力少なく抑えようとするビジネスモデルには、労働者を不当に搾取し、雇用を不安定化させるているとの批判も出ている。16年の大統領選に向けて候補者の間でも新たな争点として浮上しており、今後も注目が集まりそうだ。
ウーバーのビジネスモデルの特長は既存のタクシーが抱える問題を、スマートフォンアプリによる配車システムで解消した点にある。電話でタクシーを呼ぶ場合、自分の居場所を正確に伝えることが難しいうえ、実際にタクシーが到着するまでの時間もはっきりとしない。一方、ウーバーの場合は、専用アプリの地図上で配車場所を指定すれば、すぐに配車までの時間が表示されるという利便性を実現している。
またウーバーでは料金の支払いは事前登録したクレジットカードで行うため、運転手とやりとりをする必要もない。タクシー料金との格差は地域によって違いがあるが、ワシントン市内では「タクシーよりも2割は安い」との声もある。
ウーバーが低料金でサービスを提供できるのは、専業の運転手を雇用するのではなく、「自家用車を持っている個人にお客を紹介する」というシステムをとっているからだ。収入源は運転手から受け取る「仲介料」に限られるが、運転手の社会保障や失業保険に関わるコストや車の維持費などを回避することができる。
こうしたシステムは「手が空いた時間にお金をかせぎたい」と思っている労働者側にもメリットがある。ウーバーの登録運転手数は16万人にも上り、このうち6割は他にも仕事がある兼業運転手だ。大学バスケットボールの有力選手が弟の学費を稼ぐために運転手として登録しているといった話が美談として報じられることもある。
ウーバーの運転手のように個人が自分の時間の都合にあわせて短時間のサービスを提供する経済活動を指す「オンデマンド・エコノミー」という言葉も浸透してきた。同様の仕組みは家事代行や食事の配達など、さまざまな業種に拡大している。
米紙ニューヨーク・タイムズは7月13日、トップクラスのビジネススクールの卒業生や弁護士にも特定の企業に所属せずに仕事をする動きが出ていると指摘。「より効率的で自由度の高い働き方がブームになっていることは疑いがない」と報じた。
ただしこうした潮流には異論もある。ウーバーでは、一部の運転手が「ウーバーは運転手が利用者から受け取る料金の設定や登録運転手としての契約の打ち切りなどで強い権限を持っている。運転手を事実上の従業員として扱うべきだ」と主張。ウーバーに社会保障や車の維持にかかるコストを負担するよう求める訴訟が起こしている。
こうした労働環境をめぐる問題は政治的にも大きな注目を集める。これまで労働者を低賃金で働かせているとして批判されるのは小売り最大手のウォルマートや外食最大手のマクドナルドが定番だったが、ここにウーバーも加わってくる可能性がある。
大統領選で民主党からの候補指名を目指すヒラリー・クリントン前国務長官(67)は7月13日の演説でウーバーを名指しすることは避けながらも、「オンデマンド・エコノミーは職場の保証や、良い仕事とはどのようなものかについて難しい問題を投げかけている」と懸念を示した。
一方、共和党のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)はウーバーが既存のタクシー業界との競争を生み出したことを高く評価。16日にはカリフォルニア州で自らウーバーに乗車するパフォーマンスをみせた。他の共和党候補もウーバーに好意的で、若者に人気のウーバーを応援することで、支持層を広げようという思惑もあるとみられている。
米紙ワシントン・ポストは7月20日付の社説で「ウーバーへの態度は各候補者の未来の職場や規制のあり方についての立場を示す指標になっている」としている。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)