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【アメリカを読む】オバマ大統領「最高の1週間」
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ホワイトハウスで貿易促進権限(TPA)法案に署名するバラク・オバマ米大統領(中央)。得意げな表情が「3連勝」の喜びを如実に物語っている=2015年6月29日、米国・首都ワシントン(AP) 任期満了まで約1年半となったバラク・オバマ米大統領(53)に「最高の1週間」が訪れた。6月25日には、連邦最高裁判所が医療保険制度改革(オバマケア)をめぐり、連邦政府が保険購入者に支払っている一部の補助金を合法と認める判決を下した。また同性婚の是非をめぐる最高裁判決や通商政策に関する法案審議でもオバマ氏の思い通りの結果が得られ、低迷していた支持率も50%まで回復している。いずれも激しい議論が続けられてきた問題で逆の結果が出てもおかしくなかっただけに、オバマ氏は思わぬ「3連勝」に笑いがとまらない様子だ。
「すべての勤勉な米国人にとっての勝利だ」。オバマ氏は25日、ホワイトハウスでのスピーチで満足げな表情をみせて最高裁の判断をたたえた。
裁判では、2010年に成立したオバマケア関連法が補助金は州が開設したウェブサイトでの購入が対象と明記しているにもかかわらず、オバマ政権が連邦政府のサイトでの保険購入者にも補助金を支払っていることの是非が問題となった。しかし最高裁は判決文の中で、「法律の文言の意味は全体的な文脈の中でのみ明らかになる」とし、この補助金を合法と判断した。
連邦政府のサイトは州独自のサイト設置を見送った34州の住民が使っており、このうち640万人が月額平均272ドル(約3万3000円)の補助金を受け取っている。これが違法と判断されれば、個人の保険料負担が支払い可能な水準を超え、「すべての国民に適切な価格で医療保険を提供する」というオバマケアの趣旨が根底から揺らぐ可能性があったが、オバマ氏は最高裁の判断で救われたかたちだ。
オバマケアはオバマ氏にとってどうしても守らなければならない「虎の子」だ。オバマケア関連法はオバマ氏が初当選した08年の選挙で、民主党が上院で60議席を確保した勢いを駆って、共和党から1票の賛成も得ずに成立させた経緯がある。しかしこのことが共和党との深刻な対立を生み、オバマ政権はその後、重要政策で議会から協力を得られず、目立った成果を残せない状況が続いてきた。今回の最高裁判決で、オバマ氏のレガシー(遺産)がゼロになる危機が回避されたといえる。
しかもオバマ氏はさらに2つの勝利にも恵まれた。最高裁が26日に下した同性婚を憲法上の権利と認める判決は、同性愛者の権利擁護の先頭に立ち、全米での同性婚承認に向けて世論を引っ張ってきたオバマ氏の立場を全面的に支持する内容だ。また29日に成立した貿易促進権限(TPA)法はオバマ氏が宿敵の共和党と歩調を合わせて実現した政策で、アジア重視戦略の中核に位置づけられる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉合意に向けた重要な一歩となる。
オバマ氏はレームダック(死に体)化が進みかねない任期満了まで1年半というタイミングで追い風を受け、米CNNテレビが26~28日に行った世論調査では、オバマ氏の支持率は50%に上昇した。政府機関閉鎖やオバマケアのウェブサイトでのトラブルに見舞われた13年後半には支持率が41%まで落ち込んでいたことを考えれば、上々の数字だ。
今回の2つの最高裁判決はいずれも9人の判事のうち5人が賛成し、4人が反対するという僅差の判断だった。またTPA法成立も迷走を重ねた2カ月間の審議の間には何度も実現が危ぶまれただけに、米メディアも「オバマ氏就任後として最高の1週間になった」と驚きを隠せない。また米国経済は失業率が7年2カ月ぶりの低水準にあたる5.3%まで下がるなど、堅調な拡大を続けており、「支持率上昇の本当の要因は経済の好調さ」(CNN)とも言われるほどだ。
政治専門紙ポリティコによると、オバマ氏は側近らに対して、自らを冷戦終結や経済成長の実現で評価されるロナルド・レーガン大統領(1911~2004年)になぞらえ、「レーガン政権の次が(同じ共和党の)ブッシュ政権だったように、次の政権に引き渡す基盤を確実に作らなければならない」と述べた。自らの実績を誇るとともに、16年の大統領選挙での民主党の勝利につなげることに意欲を示したかたちだ。
1期目のオバマ政権で上級顧問を務めたデビッド・アクセルロッド氏(60)はポリティコに対して「オバマ氏だって人の子。何年も成果を出そうと努力をした末の結果だけに喜びもひとしおなのだろう」と話している。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)