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科学
「世界を守る日本」へ進化を第20回「海の日」特別行事総合開会式
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第20回「海の日」特別行事総合開会式でスピーチする日本財団の笹川陽平会長(左)。安倍晋三(しんぞう)首相(中央)も出席した=2015年7月20日(日本財団撮影)
「『世界の海を守る日本』へと進化することが求められている」。日本財団の笹川陽平会長は7月20日の「海の日」に行われた、政府主催の第20回「海の日」特別行事総合開会式で、国際社会における日本のリーダーシップを訴えた。
東京都内のホテルで行われた式典には、安倍晋三首相のほか、山谷(やまたに)えり子海洋政策担当相や太田昭宏国土交通相、国際海事機関である英国のIMOの關水(せきみず)康司事務局長、20カ国の駐日大使ら国内外から約410人が出席。笹川会長の呼びかけは、世界に向けての発信にもなった。
式典では、笹川会長のスピーチ後、山谷氏が日本財団など民間法人、関係省庁、横浜市の33団体で構成される実行委員会が主催する「海でつながるプロジェクト」の開始を宣言した。
世界の海で、深刻な問題が起きている。日本財団がブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)などの研究機関と実施した海の未来を予測する「ネレウスプログラム」の研究によると、水産資源への影響として、2050年までに、日本のマグロの年間漁獲高は現在よりも4万トン減少するという。これは00~06年の平均漁獲高から約10%減に相当する。また、ヒラメや赤貝など日本人に身近な種の減少も見込まれ、日本の食卓は近い将来、大きく様変わりする可能性があるとしている。
日本財団は、この海の危機に対して、広い視点で考え行動できる人材の養成と、その人材による利害を超えた国際的な「つながり」が重要と考え、スウェーデンの世界海事大学など10の機関・大学と連携し、「海の世界の人づくり」事業を実施している。15年時点で129カ国の1075人が国際法や海洋管理・環境などのプログラムを修了し各国で活躍中だ。
海の日には、式典に続いて「IMO 世界海の日パラレルイベント2015」国際シンポジウムが開催された。「海事から海洋への広がり」など4つのセッションが行われ、各分野における国内外のオピニオンリーダーが議論を交わした。
「次世代に海を親しませるための教育」を議論したセッションでは、田中智志東大大学院教授(教育学)が進行役となり、5人のパネリストが、日本における海洋教育の現状や欧米での実践事例の発表を行った。
パネリストの一人、米国カリフォルニア州モントレーベイ水族館のマーガレット・スプリング副館長は、水族館が開発した携帯アプリ「シーフード・ウォッチ」を紹介した。検索窓に魚の名前を入れると、現在の資源量に基づき、購入すべき魚種を色分けして示してくれる。緑は「購入に最適」、黄は「購入してもよい」、赤が「購入を避けるべき」。米国の多くの企業や飲食店が参画しており、赤色魚種は段階的に販売をやめるなど、米国内で大きな影響力を持ちつつあるという。情報は6カ月ごとに更新され、天然、養殖の別も表示される。視覚的に分かりやすい仕組みなので、子供たちにとっても水産資源について考えるきっかけとなっている。
また、日本ユネスコ国内委員会委員の及川幸彦氏は、東日本大震災の被災地の宮城県気仙沼市で、地元の中学生が住民と一緒に海抜を表示したシールを張り、地域全体の防災に対する意識を高めている実践例を紹介した。
「世界の海を守る日本」へ日本が進化するためには、政府のリーダーシップはもちろん、市民一人一人が、海で何が起きているかを知ることがまず大切だ。水族館などユニークな手法やアイデアを持っている担い手が学校と連携し、さまざまな切り口から海洋教育に取り組むことも必要だろう。海とあまり接点のなかった人や、若い世代への働きかけが、世界の海を守る鍵となる。(日本財団総務部 エグゼクティブコミュニケーションチーム 橋本朋幸/SANKEI EXPRESS)