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【ソーシャル・イノベーションの現場から】心でつながった「普通の家族」 特別養子縁組への理解呼び掛けるキャンペーン

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【ソーシャル・イノベーションの現場から】心でつながった「普通の家族」 特別養子縁組への理解呼び掛けるキャンペーン

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4月4日の「養子の日」に東京・渋谷などで特別養子縁組への理解を訴える街頭キャンペーンを実施した=2015年、東京都渋谷区(日本財団撮影)  花冷えとなった4月4日。日本財団は、この日を語呂合わせで「養子(ようし)の日」として、東京・渋谷の商業施設ヒカリエのほか、JR恵比寿、品川、原宿の各駅で街頭キャンペーンを行った。特別養子縁組の制度の解説や日本における子供の福祉の現状、当事者の声が掲載された冊子を配布し、「すべての子供が温かい家庭で育つことのできる社会に」と、特別養子縁組への理解を呼び掛けた。

 「特別養子縁組」は、婿養子や跡取りを取るためなど、さまざまな目的で用いられる「普通養子縁組」とは異なり、子供の福祉のための制度。何らかの事情によって生みの親が育てられない、原則として6歳未満の子供と、育ての親に親子関係を成立させるもので、生みの親の親権を切り離して育ての親と実の親子関係を結び、戸籍も「養子」「養女」ではなく「長男」「長女」と記載される。

 国連は「子どもの権利に関する条約」で「すべての子どもは家庭環境の下で成長すべきである」と規定しているが、日本における特別養子縁組の成立件数は年間約300件と、米国の5万件以上、英国の約4700件に対し、著しく低い数字となっている。これは、社会的養護を必要とする子供の1%にも満たない数だ。養護が必要な子供の85%にあたる約3万人は施設で暮らしている。

 血がつながっていなくても

 4日午前に行われたオープニングセレモニーでは、日本財団の尾形武寿理事長が日本のこうした現状を指摘し、街頭の人たちに特別養子縁組への理解を訴えた。続いて、『「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす』の著者であり、愛知県の児童相談所で長年にわたり特別養子縁組を推進してきた矢満田篤二氏が、「すべての子供たちが、お父さん、お母さんと呼べる人のいる家庭で育てる社会にしていきましょう」と熱弁を振るった。

 さらに、特別養子縁組で子供との縁を結んだ夫婦も街頭キャンペーンに参加。東日本大震災後、震災孤児のために何かしたいという思いから特別養子縁組について調べ始めた2人。「今は『親にしてもらえた』という気持ち。私たち夫婦も血のつながりはないけれど仲良し夫婦なので、そこにもう1人加わったら、もっと良い家族になれると思って縁組した。子供が欲しいと悩んでいる方は、ぜひ一歩踏み出していただけたら」と語った。

 4日午後には、ヒカリエで日本財団主催のトークイベントも行われ、矢満田氏や特別養子縁組親子のほか、自身も養子である女優のサヘル・ローズさん、赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」で知られる熊本・慈恵病院の蓮田太二院長らが登壇した。

 イラン出身のサヘルさんは、戦争で家族を失い、その後、施設で過ごした。トークショーでは、「施設職員も精いっぱい面倒を見てくれた」と前置きした上で、「それでも私は自分だけを見てくれる、手を握ってくれる“親”が欲しかった」と述懐。現在の母親が引き取ってくれたことで、「『ただいま』と言えば、『おかえり』と返してもらえる、帰る場所ができた」と喜びを語った。

 すべての子供に温かい家庭を

 イベントの後半には、ドキュメンタリー映画監督、豪田トモ氏の『うまれる ずっと、いっしょ。』を上映。血のつながりのない親子や、重い障害を抱えた子供とその親といった、さまざまな家族愛を追った作品に、会場中ですすり泣く声が聞かれた。

 イベント終了後には、スタッフに「実子がいるけれど特別養子縁組をしたい」と、養親希望者対象のセミナーの予定を聞く女性や、「自分の子供世代に理解を広めていきたいので、今後もこのようなイベントがあれば子供と一緒に参加したい」と話す親子連れの参加者も。

 近年、乳幼児の虐待のニュースが後を絶たない。その背景にある事情はさまざまだが、レイプによる妊娠や貧困などにより、独りで悩み苦しむ女性の存在があることも忘れてはならない。特別養子縁組は、こうした赤ちゃんや母親のセーフティーネットともなる制度である。

 養子を迎えた夫婦が「特別養子縁組というけれど、心と心でつながった普通の家族です」と語るように、特別養子縁組が「特別」なものではなくなり、すべての子供が温かい家庭で、当たり前に育つことのできる世の中になることを願っている。(日本財団 広報チーム 佐治香奈/SANKEI EXPRESS

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