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子供たちに「家庭」を 特別養子縁組の普及・啓発活動展開
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「庭が広いので子供とたくさん遊ぶことができます」「鉄道が好きなので子供を迎えたら、一緒に電車に乗りに行きたいと思います」
もし子供と一緒に暮らすことができたら、こんなことをしてあげたい。集まった20組の夫婦が自分たちの思いを語る。子供といっても血のつながった子供ではなく、特別養子縁組で子供を迎えることを希望している夫婦たちだ。日本財団が2014年12月に実施した養子縁組研修の一コマである。
特別養子縁組は、生みの親が育てることができない子供のための福祉政策として25年ほど前に設立された制度だ。戸籍が実子と同じ表記になること(長男、長女など)、生みの親との親権が終了すること、原則として子供が6歳になるまでしか認められないことなどが、普通の養子縁組と違う。
子供を迎える方法としては、住んでいる都道府県や政令指定都市の児童相談所に里親登録するか、民間の養子縁組団体に相談するかのどちらかになる。全国で約2500人の養子縁組里親が登録しているが、毎年の養子縁組の件数は約300件で、待機している夫婦のほうが圧倒的に多い。多くの民間団体でも、育てられないという相談より、子供を育てたいという相談のほうが多い状況にある。
だからといって、生みの親が育てられない子供が少ないわけではない。日本で社会的養護を必要とする子供は約4万人おり、そのうち85%以上が乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしている。日本では施設で暮らす子供の割合が、アメリカの14%、韓国の57%と比べても著しく高い。国連のガイドラインでは特に3歳未満の子供は家庭で育つべきであるとしているが、日本では全国で約3000人の3歳未満の子供たちが乳児院と呼ばれる施設で生活している。このうち約700人は生みの親と全く交流がなく、それ以外にも血縁上の親元に帰ることが難しい子供は多くいると考えられる。諸外国では、養子縁組はこうした子供に家庭を与える仕組みとして、重要な児童福祉政策に位置づけられている。
ところが日本では養子縁組を国家が取り組むべき児童福祉とする法律がなく、児童相談所の業務としても明記されていないため、積極的に取り組んでいる児童相談所は少ない。日本では社会的養護を受けている子供たちのうち養子縁組する子供は年間約300人だが、これはアメリカの約5万人、イギリスの約4000人と比べると著しく少ない。
施設で子供が0歳から18歳まで育てば、税金が8000万円から1億2000万円かかるという試算がある。その上、子供は18歳で自立をしなければならない。しかし養子縁組して家庭で育つことができれば、国家の負担はなくなるうえに子供は愛してくれる親と一生いられる家庭を得ることができる。その分軽減された国家の負担を、養親のサポートや民間団体の支援に活用することが、子供にとっても望ましい社会のあり方ではないか。
日本財団では現在、養子縁組に関連した事業を積極的に展開しており、そのうちの一つが冒頭の縁組希望の夫婦のための研修である。養育里親として登録するためには研修が義務づけられているが、養子縁組里親の場合は義務ではない。また民間団体も研修の有無がまちまちであるため、子供を迎えるにあたって知っておくべき内容の研修を企画した。ほかにも、養親や養子として育った当事者のためのメールや電話での相談窓口の開設や、養親の交流会、研修などにも取り組んでいる。子供に養子であることを知らせるときにはどのように話せばいいのか、近所の人やママ友にはどこまで話せばいいのか、そんな養子縁組親子に特有の悩みも、交流会なら互いにわかり合える。
昨年からは、4月4日を「養子の日」(4と4でようし)として、特別養子縁組について広く知ってもらう啓発イベントを実施している。今年の4月4日は渋谷ヒカリエで、自身も養子として育った女優のサヘル・ローズさんや養子縁組当事者らのトークイベントを行う。また5日は養子縁組に関心のある夫婦を対象とした民間養子縁組団体の説明会を実施する。興味のある人は、ぜひ足を運んでみてほしい。ほかにも「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」のホームページ(happy-yurikago.net)で随時、養子縁組に関する情報を提供している。
「子供がいるだけで幸せ。実の親子でも養子でもそんなの全く関係ないです。親子、家族、恋人、夫婦、みんな自分の大切な人です」。特別養子縁組で子供を迎え、交流会に参加してくれたお母さんの言葉である。できるだけ多くの子供が家庭で育つことができるように、特別養子縁組という子供のための福祉が、日本にもっと広がることを期待している。(日本財団 福祉特別事業チーム 高橋恵里子/SANKEI EXPRESS)