１９９１年のソ連崩壊は、コンクールに大打撃を与えた。予算が激減し、運営は困難を極めた。そのため「スポンサーとの関係の深さが上位入賞の決め手」などと、お金とコンクールの関係がまことしやかに批判されるようにもなった。

　しかし近年は、コンクールの透明性確保に向けた努力が評価されている。今回、バイオリン部門では一位入賞がなかったが、それも「実力以外を評価しない」とする主催者側の強い意志の表れだったと指摘されている。

　発展のカギ「おもてなし」

　またコンクールに対しては、外国人参加者への対応改善が必要との指摘が出ている。ホテルなどの設定も不親切で、渡航費などの支援も薄いチャイコフスキー国際コンクールはすでにロシア人参加者の割合が増大し、「ローカル化」しているとの批判もある。音楽業界では「国際コンクールとして発展するには“おもてなし”の精神」が必要との声が上がっている。

　今回は、ピアノ部門の会場となったモスクワの「チャイコフスキー記念モスクワ音楽院」では、最終審査の直前に火事が起きるなどのトラブルもあった。運営には支障がなかったというが、あり得ない失態だった。

　若き天才たちのあこがれの舞台としての地位を守れるか。今年のコンクールでは、その課題も改めて浮き彫りになった。（黒川信雄、写真も／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）