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「異視点」楽しい運河ツアー デンマーク・コペンハーゲン
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「新港」という意味のニューハウンを出発する運河ツアーのボート。低い橋をくぐれるようにボートは平たい構造になっている=2015年6月20日、デンマーク・首都コペンハーゲン(銭本隆行さん撮影)
水郷の茨城・潮来や福岡・柳川の川下りは有名だが、ヨーロッパにも数多くの運河や川のクルーズツアーがある。デンマークの首都コペンハーゲンでも、観光の定番として運河ツアーがある。水上からの眺めは、いつもとは異なった視点から街に触れられる貴重な体験である。
コペンハーゲンはグリーンランドを除くデンマーク最大の島、シェラン島の北東岸に発展した港湾都市。陸と島との全ての間に橋をかけることは不可能で、ボートで行き来する水上交通が昔から盛んだった。つまり水辺は市民にとって常に身近な存在だった。
そのため、早くも1904年に観光向けの運河ツアーは始まった。現在は複数の会社が運航しているが、最も大きいストロンマ社の「グランドツアー」は大人1人の運賃が80デンマーククローネ(約1500円)、所要1時間で、人魚姫像、オペラハウス、国会、旧証券取引所などの観光名所を水上から眺めることができる。
そのほか、ディナークルーズ、ボートの貸し切り、期間限定ながら、ジャズまたはブルースの生演奏を楽しめるクルーズ、オペレッタ(ミニオペラ)を船上で演じるクルーズもある。
基本コースであるグランドツアーに参加してみた。ボートは200人程度は乗れる平たい船。運河の途中にある低い橋をくぐって行くには、船は高くてはいけない。
乗船した途端、雨が天からこぼれ落ち始めた。ボートには屋根はない。どうしたものか、と悩んでいると、ガイドの女性がビニール製の簡易ポンチョを配り始めた。天候不順なデンマークならではのサービスである。
筆者にとって小学校以来のかっぱならぬポンチョ姿。案外快適なもので、どんな雨でもやって来い、と思っていたら、10分ほどですっかり雨はやみ、晴れ上がってしまった。さすがは予報を裏切るのに定評があるデンマークの天気であった…。
水上から眺めるコペンハーゲンの街は、いつもの視点より低い位置から見上げることで、より迫力や威厳を増す。国会やコペンハーゲンで最も活気のある地域、ニューハウンの街並みがいつになくそっくり返って威張っているように見えた。また、「ブラックダイヤモンド」と呼ばれる国立図書館の新館は、海側から見ることで改めて“黒い塊のダイヤ”であることが分かった。
途中、カヌーを楽しむグループに何度も遭遇。また、岸辺やボートで一杯楽しんでいる人々が「乾杯!!」と陽気な声を掛けてもきた。誰もが水辺の生活を楽しんでいた。
と思いきや、白鳥の親子が悠々とボートの横を泳いで行った。アンデルセン童話の「醜いアヒルの子」さながらの光景である。
コペンハーゲンでの水辺の生活は、人だけではなく鳥にとっても、非日常ではない“日常の文化”になっているに違いない。(国民高等学校「日欧文化交流学院」(デンマーク名=ノアフュンス・フォルケホイスコーレ)学院長 銭本隆行、写真も/SANKEI EXPRESS)