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シンガポール、個人情報流出で波紋 揺らぐアジア金融拠点の座

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シンガポール、個人情報流出で波紋 揺らぐアジア金融拠点の座

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 シンガポールは、富裕層の金融資産管理を行うプライベートバンキング(PB)のアジア拠点としての地位が揺らいでいる。英銀行大手スタンダードチャータードは昨年12月、シンガポールでPBの顧客情報が盗まれたことを明らかにした。同銀行のPB部門は運用残高が250万シンガポールドル(約2億660万円)以上の富裕層が対象で、今回のような情報流出は同国では初めて。現地紙トゥデイなどが報じた。

 同銀行によると、PB部門の顧客647人の2013年2月分の口座情報が、印刷を請け負う情報会社のサーバーから盗まれたという。

 同国行政機関のウェブサイトをサイバー攻撃した疑いで逮捕されたシンガポール人から押収したノートパソコンに、同銀行の顧客情報が取り込まれていたことから事件が発覚した。

 同銀行は、口座情報の流出に伴う未承認取引は確認されていないとしている。レイ・ファーガーソン最高経営責任者(CEO)は「守秘義務と顧客の個人情報を最も重視しており、今回の事件を重く受け止めている」と述べた。

 しかし、香港のコンサルティング会社アジアキャピタルホールディングスのチーフアドバイザーは「スタンダードチャータードの顧客情報の管理能力には疑問が残る」との見方を示した。また、シンガポール通貨金融庁(MAS)も、今回の事件に対する銀行側の調査を見直した後、同銀行への規制措置も検討するとしている。事件発覚後、同銀行の株価は香港市場で13年7月3日以来の年初来安値を更新した。

 香港の資産運用会社バリュー・インベストメント・プリンシパルズのサンディ・メータCEOは「今回の事件は、一銀行の問題にとどまらず、シンガポール政府の金融機関への規制や監督にも関わる問題だ」とし、金融拠点として近隣諸国の信頼感を高めるためにも、シンガポール政府は一段と厳しい金融監督体制が必要との見解を示した。

 米コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループによると、シンガポールの金融機関が預かる外国人金融資産は約8000億米ドル(約83兆9840億円)でアジア最大となっている。(シンガポール支局)

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