日立造船有明工場で開かれた溶接技能コンクール。若手とベテランが火花を散らす=1月10日、熊本県長洲町(同社提供)【拡大】
大型プラントを手がける重機大手の日立造船(大阪市)では、近年担い手が減っている溶接技術を「伝統技能」として継承するため、年に一度ベテランと新人が技術を競う「溶接技能コンクール」を開催している。各地の工場から選抜された代表選手が集まる注目イベントで、長年の経験で培った匠の技と、若手の情熱や素養とが激突する。特に若手にとっては発奮材料となっており、コンクールは次の成長を担う人材育成で効果絶大な肥やしとなっている。
継承者難の危機
「当社の業務の原点は溶接。これができなくては品物にならない」。同社生産技術部の中村敦部長はこう力説する。
少子化や「大学全入時代」を迎え、高校を卒業して溶接士になる人の数は全国的に減少傾向。日立造船のみならず、国内の業界全体の課題で、「危険な環境での仕事は、若い人がやりたがらない。将来的には、学卒者もやらなくなるかもしれない」(中村さん)という。
コンクールは昭和時代から行われていた行事だ。造船不況に伴い、同社が造船部門を分離した平成14年ごろに数年間中断されたが、技能伝承の重要性を見直す声があがり、17年に復活した。