東芝の経営再建は、政府が支援に動き出したことで新たな局面を迎えている。ただ、米原発子会社の法的整理をめぐる日米政府間の調整など、政治色が強まり過ぎると東芝の選択肢が狭まり、再建の足かせになる懸念もある。
「全部他力本願。東芝が主体的に決定できることがない」。東芝の経営幹部は会社の置かれた状況を自虐的に語る。
東芝は米原発事業で計上する巨額損失で負債が資産を上回る債務超過に陥っており、稼ぎ頭の半導体事業を売却して財務を改善する考え。
また、今後の損失発生リスクを根本から断つため、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の過半の株式を売却する方針も打ち出した。WHに連邦破産法11条の適用を申請し、債務などを整理した上で買い手を探すのが現実的とみられる。
ただ、経営再建の鍵となるこれらの施策は、いずれも東芝の判断だけでは前に進めることができない。
半導体の売却先をめぐっては、今月末に締め切られる入札に向け、資金力の豊富な台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が台湾や韓国の企業に共同買収を打診するなど意欲的に動いている。だが「鴻海は中国政府と近すぎるので難しいだろう」(関係者)との指摘がある。政府が、最先端の半導体技術が中国に流出し、安全保障上の懸念が生じることを警戒しているからだ。