日本郵政が持つ土地や建物、機械設備などの有形固定資産については、昨年末時点での価値は3兆円超。郵便事業が鉄道輸送に支えられていたため、駅前の土地や建物を多く持つ。中でも、東京駅前や名古屋駅前の超一等地に「JPタワー」を建設し、商業施設「KITTE(キッテ)」を入居させるなど、不動産事業を強化してきた経緯がある。
野村不動産HDにとっても日本郵政と組む利点はありそうだ。三井不動産や三菱地所は自社で多くの不動産を持ち、オフィスビルからの賃料収入で経営は安定している。
一方で野村不動産HDはマンション開発が主体で、市況の影響を受けやすい。日本郵政の持つ資産は魅力的とみられる。
ただ日本郵政としては、豪物流事業での失敗により市場や日本郵政グループの大株主である日本政府などから注がれる視線は厳しさを増している。官製事業の歴史を今も引きずる日本郵政が、「まったく企業文化が異なる」(業界関係者)野村不動産HDとの融和を進められるかも難題だ。
シナジー(相乗効果)をどこまで発揮できるかは未知数で、不動産事業の育成に手間取れば、豪州での同じ轍を踏みかねず、浴びる批判も倍加するだろう。