中部電力は、電柱に超薄型ディスプレー「電子ペーパー」を取り付け、行政情報などを配信する実証実験を10月から愛知県豊田市で始める。公共の場にある電柱を、災害時の避難誘導といった地域密着の情報をタイムリーに伝える媒体にする。
電子ペーパーは、書き換えが自由で消費電力が少ない利点と、屋外でも読みやすいという紙の特長を併せ持つ。インターネットに接続し「数十秒単位で情報を入れ替えることも可能だ」(中部電担当者)。今回使う電子ペーパーは縦69センチ、横39センチで、電柱の地上約3メートルの高さに看板のように取り付ける。
中部電は全体で約280万本の電柱を所有しており、実験は景観に配慮しながら豊田市内の駅前などの6本から始める。緊急情報のほか図書館や健康相談所の紹介に用いる方針で、市の担当者は「インフルエンザの流行時期は、予防などの啓発も考えている」と話した。
中部電は一定期間後に住民に聞き取り調査し、目に留まったかどうかなどを検証する。スマートフォンから容易に情報を取得できる時代に採算性は不透明だが、将来的には企業からの広告による収入を見込む。実験のコストは非公表。
東京電力は東京・上野公園で、無電柱化した際に路上に置く「配電箱」にデジタルサイネージ(電子看板)を取り付ける実験を進めている。関西電力は電柱約270万本の活用策を一般募集し、新事業にする考えだ。