
東芝本社が入るビル=20日午前、東京都港区【拡大】
東芝が半導体子会社「東芝メモリ」の売却方針をようやく決議し、経営再建への道筋にやや薄日が差した。だが、米ウエスタンデジタル(WD)による訴訟リスクは、今後の買収手続きに高いハードルとして残る。上場廃止という最悪のシナリオを回避したい東芝だが、残る課題は多い。(柳原一哉)
WDが東芝メモリの売却差し止めを求めた訴訟は、近く国際仲裁裁判所で審理が始まる。裁定は1~2年後に下される見通しだが、仲裁裁判所が早い段階で「暫定保全措置」として予備的に売却差し止めを命じる懸念がある。また、最終的な裁定でWDの主張が認められた場合、手続き完了後でも売却が無効となる恐れがある。
東芝は来年3月末までに東芝メモリの売却を終えなければ、2年連続で債務超過となり、自動的に上場廃止となる。日米韓連合への売却手続きの妨げとなるWDの訴訟は、東芝にとって大きなリスクだ。
早期和解を果たしたい東芝だが、将来の議決権をめぐりこじれたWDとの関係は、日米韓連合への売却決定で一段と悪化した。東芝幹部は「WDは言うこととやることが違う」と不信感を隠さない。
一方、WDは売却差し止めだけでなく、新たな訴訟に乗り出すとの見方もある。立教大の早川吉尚教授は「(WDが)損害賠償請求訴訟を追加で起こす可能性がある」と指摘する。
経営再建に向けた課題は訴訟だけではない。関係各国の独占禁止法審査と、東京証券取引所を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)の上場審査を相次ぎクリアする必要がある。
日米韓連合に参画する韓国半導体大手SKハイニックスは融資にとどめ、独禁法審査への悪影響を避ける。ただ、東芝メモリとSKを一体とみなせば、世界市場の占有率は計30%弱と、首位の韓国サムスン電子(約35%)に迫り、中国の審査は長期化する懸念がある。
また、JPX傘下の自主規制法人が、東芝の株式をこのまま東証第2部に維持すべきかどうかを協議しており、厳しい判断を下す恐れも指摘されている。