
善光寺門前にある八幡屋礒五郎の店舗。観光客でにぎわっている=長野市【拡大】
長野市の善光寺門前にある「八幡屋礒五郎」は創業280年を誇る七味唐辛子(とうがらし)の老舗だ。江戸時代から続く歴史の中でその名は信州から全国へと広がり、東京・浅草「やげん堀・中島商店」、京都・清水の「七味家本舗」と並ぶ「日本三大七味」としても知られる。
創業は1736(元文元)年。江戸幕府第8代将軍、徳川吉宗の時代にまで遡(さかのぼ)る。初代、室賀勘右衛門が、善光寺の境内で売り出したのが始まりとされる。
◆善光寺参りの手形
七味唐辛子の素材は、「唐辛子」「紫蘇(しそ)」「胡麻」「山椒」「生姜」「麻種(麻の実)」「陳皮(ミカンの皮)」の7種が定番として知られる。県北部の旧鬼無里村(現・長野市鬼無里地区)周辺では当時、陳皮以外の全ての材料が栽培されていたという。素材にも恵まれ、信州ならではの独特な風味を持った七味唐辛子が生まれた。
7種の素材は漢方薬の元になる生薬としても知られている。善光寺へ、病の治癒を祈りに参拝に訪れた人たちが薬代わりに七味を買って帰っていった。
「善光寺参りの手形」とまで言われた七味唐辛子は、料理の引き立て役として食卓に上り、県民にも広く愛された。1998年の長野五輪を機に信州を代表する土産物として全国に知られるようになった。
「お客さまとは細く長く付き合っていく」
創業当時から貫かれてきた姿勢だという。調味料は風味が命。利益を求めて一度にたくさん売ろうとせず「使う分だけ」を販売することを社是とする。