【高論卓説】地銀、再編の波風 業務改善命令が映す「低収益」の現状 (2/2ページ)

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 一方、島根銀については、18年3月期の最終損益は6億3300万円の黒字。にもかかわらず業務改善命令が検討されているのは、03年から11年間トップを務め、会長から相談役に就いてもなお、取締役として院政を敷いていた元頭取に対する事実上の解任命令だった。収益改善を促すためには、この院政排除が不可欠という特殊要因があったようだ。

 とはいえ、この2行への業務改善命令は、地銀の現状を如実に映し出している。本業の預貸で収益が望めない中、大半の地銀は海外の有価証券投資に乗り出したが、世界的な金利上昇局面で損失を被ったところが少なくない。今期のコア業務純益予想を上回る評価損を抱えている地銀も散見されると金融関係者は指摘する。福島銀はその象徴的なケースだった。

 一方、島根銀の場合は、人口減少が最も進む地域で、収益基盤は脆弱(ぜいじゃく)化しつつある。にもかかわらず元頭取は強引に新本店の建設を推し進めるなど、コーポレートガバナンス(企業統治)に問題があった。

 地銀が生き残る道は、20年前の大手銀のように再編することで、経費率を大幅に引き下げると同時に、営業基盤を広域化することでビジネスチャンスを広げることしかないのではなかろうか。その再編の環境整備に向けて、政府も未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で検討を開始する方針を固めた。20年前の大手銀の再編は、不良債権に起因する過小資本が問題となった。今回の地銀の再編は、「低収益」に起因する「立ち枯れ」が問題といえそうだ。

【プロフィル】森岡英樹

 もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。59歳。福岡県出身。