■【日曜経済講座】論説委員・井伊重之
東芝の半導体データが不正に韓国企業に流出した問題は、日本企業の生命線である先端技術の防衛に重い課題を突き付けた。政府は技術流出の防止に向けた法整備を急ぐ構えだが、技術漏洩(ろうえい)には元社員が関与する場合も多く、完全に阻止するのは難しい。自社技術が不正流出した場合、その製品の流通を差し止めできるようにするなど、知的財産保護に向けた実効性のある仕組みが問われている。
韓国の大手半導体メーカー、SKハイニックス(旧現代電子産業)に流出したのは、東芝のフラッシュメモリー技術だ。東芝の提携先である米サンディスク社の元研究員が情報を持ち出してハイニックスに執行役員の待遇で転職し、高給を得ていた。結局、その元研究員は不正競争防止法違反(営業秘密開示)で逮捕・起訴された。
この逮捕に伴い、東芝はハイニックスに対し、1千億円規模の損害賠償を請求した。日本の先端技術の流出をめぐっては、新日鉄住金が韓国の鉄鋼最大手、ポスコに対して自社技術を不正に取得したとして、損害賠償と販売差し止め請求も提起している。