特許庁は17日、企業の社員の発明に対する特許権の帰属を検討する有識者会議を開き、特許法改正に向けた基本方針を提示した。特許権を「社員のもの」とする現行の規定を「企業のもの」に変更し、企業に社員への報奨を義務づけるのが柱。11月中旬の次回会議で了承を得た上で、今国会への改正案提出を目指す。
特許権の帰属については、青色発光ダイオード(LED)の特許権の対価をめぐって出身企業と法廷で争った中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が今月、ノーベル物理学賞を受賞したこともあり、改めて注目を集めている。今回の改正は発明の対価をめぐる訴訟の多発を防ぐのが狙いだ。
基本方針では、企業に研究開発投資を促し、国際競争力を強化する観点から特許権の帰属先を企業とする一方、社員の発明への意欲を確保するため、報奨に関する社内規定を労使で決めることを義務づける。報奨は金銭だけでなく、昇進や留学など幅広い内容を含む方向。労使間で訴訟に発展するリスクを減らすよう事前に社員から報奨内容の希望を聞くなど、報奨規定をつくる際に踏むべき手順を指針で示す。企業が指針の手順に従っていれば敗訴する可能性が低まる公算だ。
現行法では企業が社員から特許権を譲り受ける場合、「相当の対価」を支払う必要がある。ただ、対価の規定があいまいで、高額の対価を求めて訴えられることを危惧する産業界が法改正を求めていた。