ハワイ諸島に5月後半、「キング・タイド」警戒情報が発せられた。キング・タイドとは、通常の潮の満ち引きの規模をはるかに超える大潮のことで、過去にハワイ諸島やオセアニア諸国など世界中の沿岸地域に大きな被害をもたらしている。地球温暖化による平均潮位の上昇と地下水の過剰くみ上げによる沿岸の地盤沈下が相まって、キング・タイドは新たな水災害を世界中に引き起こすと予想され、その対策が急がれている。
キング・タイドの正体
タイド(英語:Tide)は潮汐(ちょうせき)のことで、朝晩の海の満ち引きを意味する。満ち引きは主に、他の天体の引力により地球の表面が引っ張られることにより起きる。“薄皮饅頭(まんじゅう)”のような地球の海水面は、月や太陽の引力の影響を受け、特に月の引力により盛り上がる(引力は距離が近いほど強くなる)。
海水面を引っ張る力が最大になるのは、月と地球と太陽が一直線上に並んだとき。月に2回、月と地球と太陽が一直線上に並んだとき-すなわち満月と新月の時期-に大潮は起きる。極端に大きい大潮がキング・タイド(王様級の大潮)と呼ばれる。
キング・タイドの発生には、月の位置や気象条件などさまざまな要因が深く関わっているとされる。特に月の軌道は楕円(だえん)形で、地球との距離は一定ではない。月がもっとも地球に近づいたときに引力が増し、キング・タイドが発生する。最近は、これに低気圧由来の大きな海水のうねりが加わり、甚大な洪水被害をもたらしている。